■ 多紀アルプス・筱見四十八滝
・・・・2017年11月23日
2017.11.23

雨は上がったけれども、次の寒波の襲来で、天気予報は良くない。天気図をみると、今日一日ばかりは持ちそうだし、朝方までの雨に濡れた山に、そう多くは期待出来ない。近場で行けるところ、悩んだ挙句、夏に避暑を目的に一度だけ行った、結局ちっとも涼しくはなかった、篠見四十八滝を登る事に。

9時過ぎに、陽射しの無い、濡れて暗い登山口に車を止めた。先客が車3台、他に居ようとは思っていなかったから驚きだ。東屋の前に、細い谷川の流れがある。何を隠そう、伏流を除けば、四十八滝の源泉はこれで全てで、茹だる程の真夏の避暑地としては、流石に心細い。昨日からの雨を集めても、水量は多くない。流れを遡るコースは、目の前の山腹に続く斜面を登るところから始まる。あっけないスタートから僅かに5分、第一の滝。

水の落ちる形態から云えば、勿論滝に間違いはない。「てあらい滝」の名称の滝は、確かに手洗いにちょうど良いくらいの大きさ・落差・水量の滝である。けして、誇大虚偽のたくいではない。「シャレ滝」に至っては、この滝群の特徴を表している、とも云えるのだが、それだけでは無論無いのだ。そこから、登ったり潜ったり、へつったり降りたり、暗い小さな谷をウロウロ、濡れた岩場には注意が必要だ。よく見れば、暗いながら、綺麗な紅葉などを浮かべた、小さな滝壺や流れには趣がある。残念ながら、もっと光が欲しい。運動量はけっこうあるので、体温の急上昇した体からは汗が滴る、熱い。

鎖場などを伝い、気が付けば大きな断崖絶壁の下、大きくは無くても、立派な水の帯が架かっている。ここに架かる滝は「大滝」と云い、文字通り、落差の大きい滝であった。ここから岩場を巻いて、明るい一枚岩の鎖場に出ると滝はもう無い。一枚岩を登り、よく澄んだ水の流れに沿って、谷を詰めると明るい平坦地に出た。谷の明るさは、針葉樹・照葉樹から突然に代わった、広葉樹の落葉のなせる技だ。

折よく、陽射しも出てきて、葉を落とした林に降り注ぐ陽光は、源流域を余すところなく照らす。葉を残す、イロハモミジはその中心にあった。西風が呼び込む雲で、陽射しが途絶えると、やや寒い。暖かいと云っても、温度計では気温は6〜7℃。周回コースに向うあたりに、見かけない、赤い薄い樹皮の木があっちにもこっちにも。これは、ヒメシャラに違いなく、紀伊半島南部の、大峰・台高辺りの樹木である。

廃道寸前の周回コースを降る間、陽光が切れると林床を打つ音がパラパラ、辺りの紅葉に交じって、羽虫やクモも姿を見せた。もっとも、糸を風に靡かせたクモは、冬を前にした、引っ越しの最中であったかもしれない。


CGI-design