■ 台高・高見山
・・・・2017年11月12日
2017.11.12

たかすみ温泉の広い駐車場の片隅に車が5・6台、今日の曇天の様に寒々しい光景だ。温泉も未だ、折角の紅葉も光が無くては初冬の侘しい光景に沈んでしまう。快晴という予報に対して、狭い谷間から見上げた空の何処にも青いものが無い。今から登ろうと云うハイカーも、こころなしか勢いに欠け、グズグズしている。

しかし歩き出してみると、低い気温、樹林の中では4度程度、はあるき易い温度で、汗は溢れるものの体への負担は少ない。すぐ後方で男性だけの集団の声が聞こえる。男だけのパーティで、賑やかなものに早かった試しは無い。尾根の水平道を歩く頃には、後方は森と静まり帰り、人はおろか、野鳥の気配さえ全くない。冬の冷気に閉じ込められた森があるだけだ。

それでも未だ、林床に点々と温かな葉色のコアジサイがあるだけ有り難い。夏の、暖かい季節の名残である。避難小屋の横にある高見杉、樹齢700年とあるものの、菩提寺の大銀杏を見た後では見劣りするのは止む終え無い。ここら辺りで、先行者の下山に出くわす様になった。彼らの目論見は、今年一番の樹氷では無かろうか?、小峠出合で気温は0度に近い。

谷の中では無かった風も、尾根に乗った途端に落葉を飛ばす。カサカサに乾いた葉に交じって、綺麗に色付いたウリハダカエデはまだ新しい。谷を覗くと色付いた葉も残ってはいる。見上げた急斜面の樹木に葉は残っていない。無理も無い、ただでさえ風の抜ける山域に有りながら、2週連続の北東の強風に晒されては、葉を残すどころか幹も危うい。国道から見上げた頃は、ガスの中にあった山頂部も、気温の上昇と同時に晴れて来たらしい。

霧は無くても、0度ばかりの気温での強い風は寒い。伊勢辻山辺りはガスの中で良く見えない、が少し北側の低い山辺りは陽射しで明るい。そろそろ晴れてくれるのかな?。山頂小屋は無人であった。無人の山頂小屋は酷く寒い。山頂神社の裏に周り、一服する間に手が痛む。目の前の灌木の赤い実が有り難い。神社の南側のマユミの木で、やや下方の灌木は根こそぎ倒れている。そんな処に、たった1羽カラスがいた。それほども高く無い裸の木の天辺あたりで、ジッと、下界の様子などを伺っている、偉い奴。

小屋へ戻ったところで初老の男性が到着した。真っ直ぐ神社に向かった。寒い山頂に長居は無用、降り始めたところへ女性2組が到着、その後、賑やかだった男性の集団、などなど、殆ど団子での到着であった。峠まで降りると途端に暖かい、痛かった手に血が通い始めた、ピリピリする。降るのに合わせて汗が出る。樹林の切れた登山口を、一歩出た途端に世界が変わった。陽光に溢れた緩慢な光景、散歩を楽しむ老人カップル、川面で釣りを楽しむ男性、紅葉は陽光に映え、温泉の駐車場は満杯に近い。な〜んだ、下界は天国じゃないか。


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