■ 中国山地・氷ノ山
・・・・2017年08月05日
2017.8.6

坂の谷登山口まで、国道からだと5キロの道程、これを短縮できると有り難い。林道整備のお陰でこれが可能になった、近ごろはマイクロバスでの登山ツアーもあるようで、しかし舗装された訳では無いから、車高の低い車はバンパーを擦る程度の覚悟は必要だ。坂の谷登山口に着くと真新しいトイレが出来ている。ヘビの襲撃に会ったソウシチョウの巣は小雨に濡れ、側の杉の木の上の方から、すだち雛らしい鳴き声がする。

助かってくれたら良いのだが、執念深いヘビが簡単に諦めるとも思えないし、ヘビにもまた正当な理由がある。しかもソウシチョウは特定外来種に指定されている、何方にも加担出来る状況では無い。が、助けた2羽には生きていて欲しいものだ。小雨がパラつくなか、先ずは杉の植林地から歩き始め、やがて杉の梢が切れると密生する笹、根曲がり竹の中を歩く様になる。見渡せば、大きなブナやミズナラも影を成してはいるのだが、中心はやはり竹で、切り拓かれた広い登山道の他、展望は全く無い。

斜度は緩く、辺りの散策などの可能な状況なら理想的なハイキングコースだろう。花等は少なくキノコの類を見るだけの道で、少し離れた竹林のなかから、猛獣の争う様な咆哮が聴こえてくる。相当に体積のある生き物らしい声、イノシシの痕跡は無かったし、根曲がり竹と云えばやはりクマ。笛を吹き大声を挙げて警告の後、唸り声は聞こえなくなった。しかし立ち去った様な気配は無い。

根曲がり竹の中ではこれが精一杯で、暫く歩くと「熊の水飲み場」と命名された心細い流れの谷川側に到着、こんな名前もクマの密度を表すものだろうか。狭い空には青空が覗く様になり、日がさすと、風の無い竹藪の中は暑い。ほぼ同じ様な緩い斜度の道が続き、森が切れると竹藪の広がる山腹に出て、振り返ると南側の山並がぼんやり、殿下コース出合の直ぐ上に、「見返りの坂」なる場所があった。誰も同じ衝動を覚えるらしい。

程なく、古く小さい避難小屋があって、兵庫県の最高峰、三の丸に到着。小さな山頂広場の角に展望台がある。目指す氷ノ山は、広い笹原を一旦くだり、登り返した先にあった。回復傾向の強い日差しの中、遮る物の無い登山道が白い。前回は濃い霧の中で、地形など一切の映像による記憶は無く、始めて見る光景に多少逡巡、暑そうだな・・。

樹木が無いので風はよく吹き、気温は23度、時に有る木陰では21度で、日向は数値以上に厳しかった。小さなアップダウンを繰り返し、三の丸までは少なかった人影も俄に多くなり、鳥取県側から周回コースを歩く賑やかな方々であった。最後のややキツい斜面を登ると氷ノ山山頂、小屋前の広場に腰掛け食事中の方々が10人ばかり、小屋の中で休息の方々が6人程おられた。

記憶の小屋よりやや狭い。記録を見ると、新しく設置されたものらしい、が鉄骨などは既に厚い錆に覆われ、近頃の山小屋の様式では無い。山頂広場の一角で、北側のスキー場を見降ろし昼食、その間にも北側ルートへ降る人、到着する人が絶え間ない。流石に兵庫県の最高峰、鳥取県2位の山だけの事はある。氷ノ越えの山道が、北側に続く尾根に白々と続いている。食事が終わるとどうもやる事が無い。早々に来た道を下って三の丸の展望台、笹原に吹く風の波は見ていて気持が良い。

氷ノ山と三の丸は別の山で、高度差は60m弱、別の山だと思えば登り方も違ってこよう。北側からは氷ノ山、南側からなら三の丸、周回なら2峰を絡めるコースが可能だ。展望台でのんびりしていると、白っぽい服の集団が氷ノ山を降りてくる。彼らの歩みは手に取る様に見え、点描に過ぎなかったものは、高校生の姿になり、展望台の下で小休止。

三の丸の鳥取県側には綺麗な山小屋があった。次回はあそこに行って見よう。下りは殿下コースを回って周回コースにした。出合から0.8キロとあったが結構長い。林道に降り立ち、坂の谷登山口までは4キロ、実際の歩行距離は更に長いと思われる。



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