■ 大峰・熊渡り〜日裏山
・・・・2017年07月16日
2017.7.17

梅雨は明けてなくてもこれだけの暑さ、水に親しむ方々も多いだろうし、オオヤマレンゲも未だ楽しめる。案の定、熊渡りの駐車地は隙間も無く、余地を探して狭い道路を上流側へ、落石注意の立札の下に、微塵に砕けたフロントガラスの破片が散乱、落下してきた岩塊を、まともに受けた車があったのだ。人が居なくて幸いではあるが、戻ってみたら車は石の下、では洒落にもならない。

やや広くなった辺りの川側に車を止めた、些かでも憂いが少ない。用意の間に、山側に車が止まった。直ぐ上は崖、金網も無い。時の運であるから止む終えない、次回は逆の事もあるだろう。気温はそれほども高くない、が歩き始めると汗が溢れる。30分の林道歩き、ゴロゴロ石だらけのこの道は大変に辛い。林道終点で小休止、時間が遅いので他に人はいない。大きな枝ほどもある、太い蛇がいただけだ。

双門コースの踏み跡を伺うに、結構交通量は多いらしい。アスレチック紛いのコースは面白味にかける、休息くらいは緊張無しに過ごしたい。鉄梯子の途中では、気の抜ける様な休息は無理だろう。先ずは杉の植林の中をジグザグ、間伐の無い辺りは成長した枝で夜の様な暗さだ。高く無い気温でもやはり汗はボタボタ、植林が切れた尾根の上で小休止、と後から、大きなザックに長い柄の傘を持った単独が着いた、それは山側に車を止めた男性であった。

テン泊は間違い無い、下手をすると2泊かも、長い傘は雨中の散策を想定しての事で、雨対策なら小さいものがあれば足る。なかなかに山慣れた風情の単独である。少し離れた場所でお茶と非常食、どうもこちらを軟弱だと見たらしい。ならば、お先に歩き始めて最短の尾根コースを歩こう。恐らく彼も同様のコースを歩くだろう、プライドの成せる技である。よもや追い付かれるとは思わ無いが、少々本気で歩いて登山道出合い、で振り向くと、ずっと下の方を歩かれている。

風も適度に吹き涼しい、少し休んで次は川合コース出合まで休み無し。大きなミズナラのあった場所が妙に明るい、ミズナラはと見ると、太い幹は折れ、斜面に散乱していた。この場所では、幹の真ん中あたりで折れたブナがあったところだ。気象条件の嚴しい場所だろうか。やっと河合コース出合についた、膝が上がらないほどの疲労、後続はと見ると、遥かの下方まで姿が無い。しかし暑かった。

ちょうど足場の悪い、最後の急斜面に足を踏み出したばかりの若者の姿、項垂れて登る姿が痛ましい。休む間にソロのお若い男性が2人、彼らの足取りは確りしている。降りて来られる方々も一様にソロ、今時の流行りなのか、トレイルランスタイルの方々ばかりで、しかし実際に走っている人は居なかった。今日の大峰はどれ位の人が居るのか、降りて来られる方々はひっきりなしに続く。

頂鮮岳の山腹を巻くあたり、大峰回廊と呼ぶあたりの笹は回復傾向にある。トリアシショウマやカラマツソウの姿もあり、シモツケソウも?、と探してはみたが見つからない。どうやら鹿の個体数が減っているようで、新しい糞は殆ど見ない。このまま回復してくれたら有り難い、そうでなくとも、林床の苔の類は減っている。むかし見た、感動の光景をもう一度観てみたい。高崎横手から日裏山へ向かった、ここにも鹿の痕跡が殆どない。代わって、人の踏み跡は確実に増えておる。しかし、環境省による遊歩道計画らしい痕跡は見ない。

日裏山の苔は厚く、辺りのシラビソが香ばしい匂いを飛ばしている。ルリビタキの鳴き声は各所で起こり、肌寒くなって気温を見ると16度、地上と20度の差、手がかじかんで痛い。もっとも、乾いた服があれば、こうはならない。お泊りの方々はお持ちであろう。1時間ほどは日裏山でゆっくりして、大峰回廊をあとにした。途中、草を食む鹿が一頭、ちっとも人を恐れる様子が無い。声を掛けても僅かに反応する程度、この鹿は、恐らく人に育てられたものだろう。食べっぷりを見ているだけで、対象となる野草の運命が気になるほどだった。直後、ものの崩れる音に振り向くと、大きな枯れ木が倒壊するところだった。長年山を歩いて、始めて目にした光景だ。あれが当たれば、生命も危うい。駐車地の岩と云い倒木と云い、恐ろしい事は結構身近にある。


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