■ 京都西山・地蔵山
・・・・2017年04月23日
2017.4.23

山桜の色は、白い花びらと、軽妙な朱、何と表現すべきか言葉が無い。桜餅の色では食い気ばかり、陽に透けた様子はあれほどは黒くないし、陽にかざした上等のワインより淡い感じの葉、の織りなす色彩だ。越畑の家並みの側の桜、桜と云っても、ソメイヨシノもあれば枝垂れ桜もあり、4月も半ばをすぎれば、八重桜も満開でちょうど見頃、神社の下では、シャクナゲも満開で、序と云っては花に叱られそうだが、ヤマブキも満開であった。

今日は陽射しこそ遍く地上に溢れ、雲一つ見えない晴天ではあるが、吹く風は冷たく、日陰では温かい物が無いと寒い。地蔵山では2週間程前に、結構な積雪があったと聞くし、花も一斉に咲きだしたものと思われる。芦見峠までの道は、山腹崩壊により崩れた道がやっと元に復して、高巻きのアルバイトも無くなり、随分楽になった。暖かい陽射しが十分に届くのは、未だやっと芽が膨らみかけたばかりの樹木の所為で、今日のところはこれが有難い。

峠では、いつもの様に倒木に腰掛けて小休止、冷たい風も幾らか防げて、木漏れ日の落葉の上は極楽浄土。背の高い山桜の色合いが、陽に透けて、何とも云えず美しい。沢山の足跡を残す登山道の、横に広がる伐採地の手折られた茎に、零れそうな程の水分を溜めたワラビ。急坂を越えた松の林に、満開のミツバツツジ、しかしこの色は少し軽薄な色で重みが無い。4月に入っての重い雪は、各所に倒木をもたらし、登山道は酷い荒れ様である。

何れ奇特な方々により、綺麗に整備されるのだろうが、それ迄は、既にしっかりした踏み跡となった巻道を歩く。少々の困難は、直に克服されて、新たな道が出来る。関電の巡視道には赤いテープが目立ち、知らない人が迷い込むのも止むを得ない。どんなルートか行ってみよう、少なくとも見える範囲は自然林が続く道だ。暫く続いた自然林の道も、やがて杉の林に変わり、何とか読み取れた踏み跡も同時に霧散した。その先は荒れた山腹が続いている。

ということは、目の前の尾根に逃げたと言う事で、斜度は当然あるものの、正規登山道より随分楽だ。斜度の緩い尾根を登って、斜度が厳しくなった辺りで左に振って、正規登山道に戻ると楽に山頂辺りまで、と思っていたのはほんの束の間、戻ってみれば幾らも登っていなかった。ヒーヒー登る傍らを、タブルストックのおじいさんが降って行った。次にはやはりダブルストックの女性が降って行った。ヒーヒー登りはまだ続く。

やっと斜度が緩むと、満開の、綺麗なコブシの花の下であった。未だこの辺りに桜は咲かない。木の芽も膨らみかけたものは少ない。アセビの林を抜けるとカタクリの花が満開であった。満開のカタクリは形が美しくない、半開きが良いと思う人族は少数だろうか?。ここのカタクリは増えそうでいて増えて行かない。人の成せる技か鹿の食害か、お地蔵様の周りのカタクリも姿を消した。アセビの勢いは未だ周囲に及んでいない。お地蔵様は手に、数珠をお持ちになった。それ程も、御心をお痛めになる事がお有りなのだろう。墨染の衣から覗く御身足からは、うかがう事が出来無いのだ。

ピークから愛宕山への稜線降り、登って来られる方々は健脚揃いで、道みちの声にも張りがある。地蔵山カールから亀岡を見下ろしつつの行動食、風の強い寒い辺りを避けた草の上、今日は珍しい位に遠望が効き、深山ピークの観測所が見えるくらいだ。愛宕山手前を右に折れてジープ道を降った。降りるに伴い、どうにか葉を出し始めた木々も見られる。そうした木々の中を飛び移る、陽射しを受けたオオルリは、鮮やかな瑠璃色であった。


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