■ 播磨・三久安山
・・・・2017年04月16日
2017.4.16

音水湖畔の丁度中程、湾戸の奥に登山口はあった。林道はあるし、少し上には建屋もあり、行けるだろうと車を進めると、施設は閉鎖され、路面は泥に覆われ、林業関係者の重機があって、どうも宜しく無い。引き返して、登山口看板側の路肩に止めて、用意の間にご夫婦の車が着いた。彼らは、明らかに廃墟を目指して車を止め、そして鎖で閉鎖された道を廃墟目指して歩いて行った。少し気になる行動である。

用意が整い、歩き始めた林道に、大型のキャタピラー、伐採でも無く間伐でも無く、しかし激しい作業の様子はよく分かる。ゴム製のキャタピラー車は初めてお目にかかった。林道は凡そ2キロ程、かなり斜度のある道である。泥濘む林道は、広大な伐採地を前に舗装が終わり、ここからはダートで、通常の車両の通行を想定しない厳しい斜度に変わる。直後に、植林地の暗い林床ばかりに見かけたミツマタの、大繁殖地があった。

ミツマタは恐らく強くない。目の前に広がる、満開の黄色い花を着けた繁殖地は、荒れ地の開拓者が蔓延る頃には姿を消すのでは無いか。風に乗り、仄かな甘い香りが漂っていた。といった余裕はここで消え、厳しい登りは見上げるばかり。三久安山(さんきゅうあんさん)等と、浪速のおっちゃんが命名したとしか思えない妙な名前の山は、真っ直ぐに、急角度で登ったあの尾根辺りでは無いか?、と思われてしようが無い。今の高度に400程を稼ぐと1000になる。目指す三久安山は1100程だから、きっとあの辺りであろうと思いながら、厳しい斜度を前に汗を拭く。

温かくなって直ぐに20度超えは厳しい。斜度が少し緩むと植林地の境に達する。ここからは日陰に入り、踏み跡程度の途で風ほどは涼しい。目の前に広がる景観の一部には、まだ残る雪で白い山腹の山々もある。ではあるが、一直線に登り詰める山腹の斜度も半端なく嚴しいのだ。宍粟の山道は、兎角真っ直ぐなルートが多い。どうやら斜面を登り詰め、尾根下の平坦地には、溶け残る雪。気持の良い尾根歩きに変わり、真っ白な山頂部を見せる氷ノ山は素晴らしい。その少し北に、同じく山頂部を真っ白に染めた扇ノ山。

素晴らしいビューと風の抜ける心地よい尾根道、ピークはこの先にある筈、であった。一際小高いピークに何も見えず、え!?、無情にも、三久安山まで55分、潤いも何も無い無味乾燥を形にした看板であった。ピークの背後は降っている。広からぬ尾根を進むと目の前に、衝立としか見え無い迷彩色の山腹があった。首が痛くなる様な急斜面。これを越え、このまた先の斜面を降り、登り返して、もう間違えようの無いピーク、けして太くは無くともブナも出てきた、これは三久安山に間違い無い!。

確信を持って辿り着いたピークはまたもやハズレ、目指すお山は更に北のピークであった。この様な、蜃気楼とも云えそうなお山は、台高の白髭岳に似ている。白髭岳は8つのピークの先にあった。まだマシかも。で、またまた降り、そして登ると、何やら良い雰囲気の綺麗な尾根に巨大なブナ。南の展望は得られないものの、北側180度は見渡せる。未だブナの芽吹きの無い今だけの展望だと思われ、北東に昨秋登った藤無山、北西には雪を頂く氷ノ山。少しだけ日差しを避けた、ブナの木陰でお昼休息。

この場合の木陰は、文字通りブナの幹と枝のなせる木陰で葉は含まれ無い。さて、降りはどうしよう?、始めて見た地図に拠れば、北側の緩い尾根を歩いて音水湖に降りる事も出来そうだが、残された国道歩きは長い。他の周回コースは雪が残る可能性のある谷が含まれる。安全に降るにはピストンが良い。降りで歩く尾根の登り降り、何処よりも嚴しかったのは、やはり斜度のある林道で、カニの如き横這いでの降りであった。

序に寄った例の廃墟、ご高齢のご夫婦が立寄った理由はほぼ理解出来たと思う。既に利用され無い施設は、小学校の跡地利用で出来たとの説明文があり、広い庭は校庭を、未だに残る二宮尊徳像は往時のものか、校庭の隅の桜は咲き始めたところであった。


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