■ 北摂・半国山
・・・・2009年08月30日
2009.8.31

沿道の稲穂はすっかり色づいて、少し心配した冷夏による影響も、どうやら杞憂に終わるらしい。涼しさも感じられる林道には、昔懐かしい蝉の声が溢れている。街中では最近殆ど耳にしないアブラゼミのメスが林道に落ちていた。羽根が少し痛んでいる。

殺生な車が時折通るのだ、このままでは7年の夢も水泡となる。そばの杉の木に移すと、飛び立って10mほど離れた木に移った。

蝉がよく路上に転がっているのを見る。けして未だ絶命したわけでもなく、多少の介抱で飛び去ることがある。如何云うわけで道端に転がることになるのか、良く分からん。暫く歩いた後、ミンミン蝉のメスもまた同じように転がっていた。そしてやっぱり飛ぶだけの力が残っていたのだ。辺りにはミンミンゼミとツクツクボウシの声が満ちていた。

半国山を上りながら考えた。半国山はたかだか776mの北摂の低山である。東吉野村・大又の駐車場から台高・明神平までの標高差と殆ど変わらない標高差を登るのである。台高は山並みも渓谷も明神平も非日常であるが、半国山は、赤松と照葉樹の多い、何処にでもある里山の雰囲気で、見える景色も北摂の低山の間に広がる宅地くらいである。心理的にも非常な負荷がある。その上、この時期は暑い。

とくれば、これはまさに修行に他ならない。林道終点から、赤松の暗くてジメジメした、かなりの斜面を尾根まで登る際の苦痛は、何時もながらかなり応える。やっと尾根に乗り、吹く風が幾らか慰めになるような場合はそれで良し。風も無いようなときには悲しくなる。風を求めて深く抉れた道を登ると蜘蛛の巣が顔にあたる。

ヒサカキの枝などで、蜘蛛の巣を払いながらやっと風のある尾根まで到達する。半国山から東に伸びる主尾根に乗ると、堆積層らしい白い岩場も少しだけあり、風は年中吹いて幾らか山らしくなる。

樹林もそれまでの赤松中心から落葉樹の林になり、伸び伸びとした気持ちにもなる。葉叢越に、綺麗に掃除された、無人の半国山ピークが見えた。下の集落では、選挙を呼びかける女性の甲高い声が響き渡る。

東尾根を越える辺りで、後方から急速に迫るカウベルがある。地下足袋にナップサックのお爺さんが、颯爽と追い越していかれた。地下足袋は楽そうだが、マムシが恐ろしいし、岩にけつまづいても大丈夫だろうか。確かに片足1kg弱の登山靴は応える。檜の林を抜け、頂上直下の急傾斜に差し掛かると、先ほどのお爺さんの姿を捕らえた。

歩みは急速に低下し、ピーク手前で肩を並べ、ピークに設けられた原始的なベンチに、どっかと腰掛け汗を拭かれた。直後に赤熊方面からも一人、男性が到着した。雲が消え、青空が覗くと日差しが暑い。涼しい風でも汗が吹き出る。

赤熊の男性は木陰の芝に座り込んで涼をとる。お爺さんは何時までも陽差のきついベンチで動かない。一面に繁茂したボロギクのわたぼうしが風に舞う。

お先に山頂を辞し、来た道をピストンした。冷夏にも拘わらず、キノコは殆ど発生していない。幹に張り付いたツクツクボウシは懐かしい。クサギの花にたかる、全身黒く、羽根の中央部分だけが黄色い数羽のモンキアゲハは、やや珍しい。煩い有線放送もなく、選挙もどうやら無事に進行しているらしい。



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