北からの寒気の流入で、今にも降り出しそうな空模様。今年は天気に恵まれない。熊渡りの駐車地は既に一杯で、トンネルを抜けた広場に駐車、この天気でも川原には若者の姿が多く、うら若い女性の刺激的な姿も多々目に付く。
こちらはスパッツを着け、暑苦しい野暮ったい格好で黙々と車道を歩いていく。内心、羨ましく思っていても顔には出さない。瀞に浮かべた小船などは、もう、堪らない。
などと、何時にも無く心浮かれて熊渡り、橋を渡ると無味乾燥の林道歩き。前後に人影はまるで無く、足跡さえも僅かに二つほど。林道終点で一休み、今日は西の尾根を使ってみることに決定。新しい林道を歩き始めて小一時間、それほど新しくもない林道は、二つ程曲折があってその先はあっけなく終点であった。
見上げるような杉林に、加えて間伐材が散乱し、歩こうとする意欲を簡単に殺ぐ。
暫く呆〜として、乾坤一擲、恐らく早朝の雨に濡れてよく滑る杉林に取り付いた。直ぐに息が上がって勢いが止まる。下を見下ろし、歩いた距離を計るにほんの僅か。悄然とまた斜面に向かい、倒木を避けつつやっと瘤を越えた。あ〜やれやれと思う間もなく目の前の大きな瘤。落胆と安堵の繰り返しを何度と無く繰り返す、薄暗い杉林。恐らく上部は檜だったか。
僅かに明るい鞍部に出て、再び見上げたブナの林、登ると次第に展望が開け、川合を越えて、葛城山辺りへの展望も可能な広場に出た。やっと尾根を登りきり、あとは川合からの登山道に出会うだけ。暫く右往左往した挙句、ピークを越えて下ったところへハイカー数人。
暫く歩くとカナビキ尾根ルート出会いである。出会いでは単独男性が一人、暫く話し込んでお先に失礼。
人が後ろにあると懈怠を生じないから情けない。見上げた空は何時しか快晴、乾いた涼しい風がブナの林を抜け、何時しか高崎横手に差し掛かり、右にとって用事を一つ。取って返して左に下りて、涼やかな水の流れる狼平の河原小屋。既に着いていた先ほどの男性、煩わしいのは嫌だとの事、テントを張って早速昼ね。
弥山川を遡り、池の谷と八剣谷別れでツエルトを張った。飲み物を水に沈めて30分、傾いた西の空から池ノ谷の奥深くに、暖かな日差しが差し込む。今日ばかりは日差しが懐かしく、川原の岩にのっかって、ただただ呆〜〜とするのであった。翌日は酷い寒さで目が覚めた。ツエルトの中は水浸し、じっと曙光を待ったのである。
そして今は風邪薬を飲んでいる。
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