■ 丹波・向山連山
・・・・2016年06月26日
2016.6.26

向山は、ヒカゲツツジの時期でもなく、梅雨の合間に登るべき山かどうだか知る由もない。前回歩いた時に見逃した古墳は未だ残っている、汗をかくにはちょうど良いくらいの累積標高があるのは間違いなく、思いの外の登り応え、かなり厳しいコースであった。湿度は高いし、雲間から溢れる陽射しで下界では暑いほど、樹林の中の涼しさに期待しながら観音堂前の登山口に差し掛かる。

刈られているとはいえ、登山口から続く夏草の道は嫌なものだ。雨は無くとも湿っているし、蛇でも出たら何とする、第一人の足が遠のいている証左ではあるし、気が滅入る。と、そこに現れた黒い蝶、誘うかの様に、目の前の草に留まっては、登山道を少しずつでも登って行く。調べたところジャコウアゲハ、必ずしも天の使い等では無さそうだから、誘われたのは人の心持ちの成せる業だが、お陰で弾みが付いたのは事実だ。

少し登ると防獣ネットのゲートが2箇所、金属質の不気味な音が響き、見上げた山腹にはジメジメした厳しい道がほぼ直線で続いている。腕の痒みで辺りを見ると、周辺を飛び回る藪蚊の群れ、晒した腕は既に食われ、振っていないと彼らの餌食だ。上方に明かりの漏れるところが2の山であった。手前に昭和30年頃に発見されたという古墳ガイドがあった。まずは明るい尾根まで出て、蚊の集団を振り切る必要がある。

流石に尾根にはそよ風と冷たい山の空気があって、蚊の群れとは一線を画する事に成功した。改めて古墳ガイドを読ませて頂いた、それによれば、発見後に盗掘により頭部等は紛失したとあり、その他は現在もそのまま安置されているそうだ。頭部などを持ち出してどうするのだろう。古墳そのものの確認は出来なかったが、下界への展望に優れた場所を探せばそこにある。

道は暫く平坦な尾根歩き、3の山から先は記憶にある。登山道には色褪せた大量のネジキの花が残っていた。顔を上げると、ネジキやツツジ科の実は今年は豊作だ。少し高度を稼ぐと突き出た岩の展望所がある。ところがここは暑すぎて、木陰に戻ると同時に巨大なムカデが這い出てきた。ムカデにとっても暑すぎたのか、暗い湿った岩の間に逃れて行った。4の山手前の綺麗な尾根で暫く体を乾かした。気持の良い風が抜けて行くし、展望にも優れた場所だ。

3の山から4の山にかけては、前回確認した以上に古い土塁等の遺跡が残っていた。帰りに確認したところによれば、黒井城よりやや古い時代のものらしい。4の山から少し降る、そうして登り返すと北峰で、綺麗な場所で昼食にちょうど良い。カラの仲間が沢山いて、人を見に来るから面白い。昼食後はそのまま登って向山、杉が出て来て全体に暗い。北峰等は花崗岩とツツジ科の灌木と松でさっぱりした美しさがあった。

向山が一番高いかと思っていたが、次の5の山は更に高く、600に近い。ここからは降ったり登ったり、かなり高度差がある。蛙小峰はどうした事か、歩かずに通過してしまった。これを過ぎると人工林が主体で面白い事は無い。アップダウンだけは続くので嫌になる。今日は、反射板しか無かった清水山はパス、水別れ公園に下降するコースを採った。このコースは細尾根の急斜面を降る、補助ロープは延々と続き、見上げると、2の山への登りと大差無い。

人工的な展望所の跡から踏み跡を失った。朽ちて名残を留めない階段の跡があるからどうにか下山は出来るだろう、崩壊箇所の心配はあったが、どうやら無事に林道に降りた。正規のルートは谷筋にあった。谷水を引いた手洗い場所があった。ザックをおろして汗で濡れた顔と手を洗うとスッキリした。さて戻ろうか、とみたザックの上、見覚えのある蠕動運動の虫が2匹、小さいが紛う方無き山ビルだ!、恐ろしい。正規の谷ルートを降っていたら無事に済んだだろうか。今日は蝶に始まり、藪蚊と、大きなムカデと、ヤマカガシと、最後に山ビルに出会った。


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