■ 丹波・三尾山
・・・・2016年06月05日
2016.6.5

春日から、多岐アルプス西ヶ岳に向け走行中、ふと見た道路の片隅に、登山口、の看板が目に飛び込んだ。天からの啓示と云うことも無いではないから、これを黙殺する訳にも行かず、取って返して看板の指す、三尾山の登山口目指して山道を数分、ミラーも何も無い暗い道の先に意外な程整備された駐車場があった。

雨は小降りになってはいたが、時折強い大きな雨粒を落として来る。水もお昼の食料も未だ調達出来ていないし、偵察が終ると適当なところで引返すつもりであった。カッパを着て歩き出すと直ぐ、道を這うサワガニに出会った。あっちにもこっちにも居て、迂闊に足を降ろすと殺しかねない。如何に久し振りの雨だからとはいえ、サワガニの数が多いのに間違いがないので、この道を走る車が滅多にないからだ。

整備の行き届いた林道は適当な高度を稼ぎながら、クネクネ続いている。何時しか展望も良くなり、目の前に立派な山が見えだした。目指す三尾山であるかどうだか分かっていない。気持の良い林道歩きは続き、片道3.5キロの道程とは、ほぼ林道歩きではあるまいか?、等と思えてきた。雨は何時しか止み、雲間から明かりが漏れる程に回復した。お陰でカッパの中は汗まみれ、山に登らなくても十分だとは云えそうなくらいだ。

林道は徐々に高度を上げ、サワガニの姿も見なくなると、米粒状のネジキの花やマタタビの白い葉等が現れ、雨上がりの梢を、白い蝶や黒い蝶が飛び回る。林道が幾らか細くなった辺りで、古道らしい消え掛かった路を見た。直ぐ先で終点で、稜線を跨ぐとお地蔵様のある峠に着いた。ここからルートは三つに別れ、一つは当然降り路、右手は見えていた山への登山道、左手700メートルが三尾山らしい。

700メートル程度を残しての撤退は情けない、せめてピーク辺りの確認くらいはやるべきだろう。ここいらの山は標高より垂直に切り立った岩場が怖い。そんなピークなら撤退も選択肢だ。峠からの斜度は一流で、林道歩きで楽した身には沸々と応える。濡れた小さな露岩の巻道を登った所で上から声が聞こえる。それも大勢、雨の中、こんなアホな事をやるお馬鹿さんは他にもいたんだ!。

少し登った所で先頭と出逢った、お互い、こいつはアホや、と思った筈だ。それが「良く登って来た、偉い!」に込められた真意だと思っている。10名程のパーティで、途を譲って戴いて薄日の指す細尾根に着いた。背の低いタカノツメや灌木ばかりで、かなり厳しい気象条件であることが良くわかる。尾根の両サイドは切れ落ちているらしい。小金ヶ岳に似ている。

小休止で汗を飛ばして、目の前のピークに向かう。勿体無い事に、一旦降って登り返して、やっとピークだ!、と見た山頂の不思議な形、何これは、城跡?、平坦な方形に加工された小広場があったのだ。暑さを避けた、枝ぶりの良い松の木陰でネットを見ると、黒井城の支城だと知れた。向井山もそうだが、ここも山城にしては標高があり過ぎる、籠城の他に戦法が無い。

あたりを窺っては見たが目ぼしい物は何も無い、そんなら帰ろうか、帰るにしてもどう帰ろう?。ピストンは詰まらないし、ネットを参考にすると周回でも距離は変りそうに無い。見れば、天守の下に続く城郭跡の中を、真っ直ぐ降る途がある。ちょっと斜度はキツそうだが降りならなんとか。降り始めて三尾山三山の在処も分かり、今日は水も無いのでただ確認のみ、ひたすら降り、高速の側道を歩いて、車で通った道を辿って駐車場、何も無い割には頑張ってしまった。


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