丹波の名峰白髪岳、と呼ぶらしい、へはおよそ10年以上もご無沙汰であった。まだ山がブームになる前ではあったが、当時からかなり賑やかな山域で、岩場の鎖場が2ヶ所あったと記憶している。何より、登り始めから続く急斜面は酷く応えた。果たして今はどうだろう。
真っ白な集落を抜け、山陰になるあたりから除雪が無い、たかだか10センチ以下の積雪に過ぎないのだが、先行車に踏まれた路面はいやらしく光っている。意を決してアクセルを踏むと、何の手応えも無く登って行く。駐車地に残る先行車の滑った跡を尻目に、故意に雪面を踏んでピタッっと止まった。今日は思ってもみない雪の日である。
登山道の記憶も曖昧で、雪とあってはルートの確認が難しいかも、といった心配は無用である。雪面にしっかり残る踏み跡を辿れば良いのだ。最奥の民家から1.5キロもあるらしい。当時は無かった案内板や有料駐車場も出て来たり、この点に付いてはコメント抜き。
林道に入ると積雪は10センチを越え、出て来た陽射しの中だけは温かく影に入ると零下になる。踏み跡を行くので負担も無い、登山口には東屋等も出来ていて、傍らには大きな地図も整備されていた。水を飲んで一枚脱いで、登山道に入ると嘗てのルートと違っている。ガレた裸の谷を巻くように着いていた嘗ての道は、今は使われていない。整備された谷とそれなりに成長した樹木の間に踏み跡が続く。暫く行くと見覚えのある急斜面に出会った。それでも綺麗に整備されてより歩き易くなった。
息は切れるもののそれ程の汗も無く尾根に出て、キツい筈の尾根歩きは直ぐに終わってしまって、樹林の中の斜度が一番きつかったかな〜。尾根にも整備された道があり、いつの間にか岩場を巻いてしまったようで、恐らく引返してきただろう若者の靴跡は、次の岩場まで拾えて消えた。ここは鎖場があって、錆びた鎖で手袋は汚れた。鎖か岩角を持たないと雪で滑る。しかし氷も無いし高さも知れている、引き返すほど厳しいところではない。
今年は2度目の新雪の上で、一本着けた後ピークへ移動、話声も聞こえるし、ピークでは吸えないのだ。しかし向の雪を纏った松尾山は存外に美しい。ピークではお二人のご婦人が食事中、降りの途を尋ねると、ここを行くのよ〜、ごめんね〜、と臀を置いた岩を指す。岩の端を一寸貸して貰っていきなりの急降下、あ〜思い出した!、この降りも厳しかった。深く掘れた岩の多い崖状の降り、ロープはあるものの、雪が着くので手が冷たい、木の方が良いんだがな〜。下の方に、先行者の姿が見えた、ちょっと心細い足の運び。
崖降りを終えたら後は綺麗な尾根道が続き、良い天気ですな〜、とにこやかに登って来たのはアイゼンを着けた外国人、だと思う、小柄の白人であった。エスケープルートから谷の源頭に降り、ここも綺麗に整備され東屋等もあったりして、周回した陽だまりでエネルギーを補給した。青い上空にジェット機が飛ぶ、北朝鮮はやりよったな。 |