怪しい黒雲の広がる越畑、学生服や自由な服装の子供が通り、広い谷に拡声器の声が響く、地域の運動会らしく活気がある。本番は未だだから、それまでに是非天候の回復が望まれるところだ。会場はすぐ先の愛宕中学分校?、小学校裏の神社から関係者らしい方が降りて来られた、現れた所が以外で思わず顔を見詰めてしまった。上は神社と地蔵山直登コースがあるだけだ。
神社裏から芦見峠に向かい、酷く荒れてきた峠道の先に男性ハイカーを発見、聞けばもうお一方先におられるとか。峠にほぼ同時に着いた3人の顔、お二人は何事も無かった様な静かな声でユリ道の来歴等の話を始めた。汗の落ちる体を栗の木の下に安め、お二人には先に行って戴いた。狭い空は少しく明るさを取り戻しつつあるようだ。
お二人の姿は忽ち樹林に消え、割合に大きな声は何時までも山腹に響き、遂に聞こえ無くなったのは、ミッションコーラの看板のあった茶店辺りまで抜けたのだろう、あの辺りは斜度が緩む。こちらもそろそろ腰を上げて、後塵を拝すること1時間、無人の反射板跡地に盛んにガスが流れる。どんな状況にせよ先ずは西向き地蔵さんにご挨拶だ。些か虚無感を湛えたところは流石にお地蔵様、仔細に見なければ信仰の対象としてはまず充分だ。先のお二人も手を合わせたに違いない。
ピークの木彫の仏像も健在であった、出来に拘わらず思いの程の結実にかわりはない。愛宕への降りでソロの男性ばかり3人、ジープ道出合でお若い男性2人のパーティと出会った。今日も滞り無くお務めは終る予定であったがそれでは面白く無い。ジープ道の傍らに見た尾根に続く道、今日はこれを辿る。
ジープ道は味気無い、尾根に続く道は明瞭で明るい、どれどれどこまで行くのかな?、可成り大きな長虫等が居たり、これは楽しみ、と思ったのも束の間、鉄塔が出て来て、踏み跡は途絶えた、そんな〜。それなら兎に角この長い尾根を降ってやろう、フワフワの林床に薄い踏み跡はある、恐らくは獣道だろうが彼らの道は人の道に成り得るのだ。
急速な落ち込みは危ないので、緩い方へ緩い方へ辿って行く暗い杉林、何時しか尾根は細くなり、両側は結構深い谷、慎重に降るその先に、樒ヶ原のジャンダルムが現れた。乗り越える事は出来ようが、枯れ松等が入り組んで偉いことになっている、行きたく無い!。左は斜度はやや緩いが先が不安、右は急だが、谷には恐らく愛宕道があるだろう。今は廃道でも辿る事は出来るはず。道跡が無ければ谷川があるのだから滝がある可能性もある、がここは右に降りてみたい。
自ら起こす落石に気を付けて、岩尾根に沿ってジリジリと降り、谷の底をマジマジと観ると、毀損してはいても確り残る道型があった。谷川で手と靴を洗って改めて見た古道、両側に縁石を積んだ立派な道だ。少し降ると古い取水設備が残っていて、その先に、今は使われない簡易水道水源地があった。綺麗に晴れ渡った明るい陽だまりの中であった。
|