この数日、暑さに人道的配慮が感じられるが、何時まで続くかそれが問題、今日のところは辛うじてセーブ、越畑の廃屋側の路肩には、先行車さえ停まっている、でも28度はそれ程低くも無い。廃屋とは云え、繁茂する庭の夏草は綺麗に掃除され、人の手が掛かっている様子に何か安堵するものがある。小さく開いたガラスの隙間から差込む光では中は暗くて伺えない。凝っと見詰めていると反対に、見られている事との違いに付いて疑念が起こる。稲川淳二の世界の始まりだ。
集落の露地には梅雨草が咲き、ミンミンゼミとツクツクボウシの蝉しぐれ、珍しい事に、家の中から生活の声が漏れてきた。おばあさんもお元気で何より、トマト二つの恩義がある。石垣や畑には賑やかなユリ、鉄砲か高砂か定かでは無いが、よくもこれだけ咲いたものだ。先行者2名の方の足跡を残す山道を辿って芦見峠。
酷では無くても相当に暑い、溢れる汗を拭き木陰の下で少休止、殆ど無風状態で放熱効果は少ない。先行者は地蔵山に向かっている、が、ここは川風の吹く芦見谷に下降しよう、そうして竜ヶ岳を巻いて竜の小屋から首無し地蔵にお詣りする事にした。谷への下降は涼しい。林道は概ね杉木立の中で陽射しは少ない。深くなるばかりに見える谷川の水は多く、青味がかった涼感溢れる光景だ。
山道も林道も、大雨の流れた痕跡を残し、それも昨日かその前日か、広域での豪雨情報には接していない、局所的な豪雨の跡だ。林道は昨年の崩壊箇所と、今年の分を加えて乗物による通行は不可能だ、徒歩でやっと通り抜けが出来るだけ、このまま放置した場合は廃道も有り得る。とはいえ毎年の崩壊に対処する予算も莫大になろう。お役所も頭が痛い。
林道終点からは辛うじて残るユリ道を歩く。林道と同様、地形を利用した細い途でさえ、痕跡を留め得ない場所もある。川の様子も大分変わって来た。無人の竜の小屋を抜けて右ターン、芦見川と別れた流れは酷く大人しい、大人しい流れの側にはクリンソウの葉が似合う。侵食の進む溝を進むと首無し地蔵、お目当ての地蔵様の裏も表もおじさんハイカーが占めていた。止む終えず、愛宕尾根を少し歩いた展望の展けた木陰を占めた。展望が良い事は暑さを意味する。昼食の間に拔ける風は涼しく、強い風を伴う地蔵様の傍では冷え過ぎたろう、全く満足の休息であった。
あとは尾根道を愛宕山まで、気温20度程度で快適である。お若い二人とも出会い、石変化に失敗したガマにも出会った。全ては、20度程に収まった、乾いて快適な寒気の支配する中であった。近々、勢力の強い台風などと云う狼藉者の侵入を許すだろう、すると乾いた涼しい空気団は後退せざるを得ず、列島は傍若無人な熱気に包まれる事だろう。涼しいってのは快適だなあ〜
|