■ 野坂山地 大御影山
・・・・2015年08月08日
2015.8.9

今津の家族旅行村は酷く閑散として、今日も高温注意情報が出ているからか、それともお一人様300円の入場料に抵抗を感じてか、事前の予想と大違いだ。お金を支払って真っ直ぐの駐車場は全くの無人、平池と云う雑草の繁茂する池の先の、カーブの車止めの向こうに真っ直ぐな道があって、途中から左に入る途を辿ると近江坂、目指すのは大御影山である。

何方も通らない、酷い陽射しだけのカーブ辺りに駐車しても差し障りになろうとは到底思えないのだが、マナーを云われると弱い。500メートルの道程を覚悟して駐車場に引返した。焼けたアスファルトは茹だる程に暑い。こんな日の山歩きは慎むのが良い、敢えて当局の方々にご心配をお掛けする事態は避けるべきだ。よって、500メートルを超える地点から、アップダウンの少ない近江坂を選んだ。樹林の多いコースで直射光は少ない。

歩き出すと意外に体が重く、温度計は32度、兎に角暑い。尾根に出たなら心地良い涼風がある筈だ。小さな谷川、この水は冷たかった、を渡渉、藪の中に古い道型が続き、良く踏まれた道である事は直ぐに解った。が、暑い!、忽ち溢れる汗、歩き初めて直ぐのバイパス分岐、まず一回目の休息、暑い風の吹く狭い分岐の白っぽく乾いた土の上では体の熱は容易に冷めない。何時までも流れる汗を拭きつつバイパスをパスして近江坂本来のコースを進んだ。ところがこのコース、近頃歩かれていない様で、藪は煩いサルトリイバラは絡む、結構斜度があって陽射しもキツく、とんでも無く暑い。

200メートル歩いてクールダウン、を繰り返し、下りになって直ぐにバイパスルートに合流した。ここからは幾分風に優しさがある。殆ど無風に近い近江坂登山道を少し離れた椅子にもなる木の根の側は心持ちヒンヤリした風に出会える。途は概ね平坦で屈託の無いコース取り、已む無く上り下りが入る他は精神論の強要は無い。

上り基調になって800メートルの尾根に至り、ここから下って林道に出会う。落合から歩くと10キロ近く、旅行村からは6キロ程の行程だ。太陽は西に傾き、酷暑の中、良くぞここ迄来たものだ。今日は誰とも会わないし、山に人の気配は無い。三重嶽は目の前に聳え、巨木の梢の成せる木陰は芝生になって、多少小バエなどの煩いのに目を閉じれば、これ以上望むべくもない格好のテン泊地。

そうと決まれば直ぐ下の谷川に出掛け、纏わりつく数リットルの汗を流してサッパリした。梢の木陰に戻って、寝具等の用意を終え、冷えたビールで乾杯だ。今晩は簡易テント、別名ツエルトで夜を明かす、環境が良いので被るだけでも充分だろう。そよそよと寄せる風、西に開けた眺望、見上げるとブナの葉の旺盛な生気が伝わって来て、何と贅沢な黄昏であろう。

赤々と炎を上げる焚き火、暫時のうたた寝の後、これが大変な事態に変わった。小さな、都市近辺の藪蚊を思えば誠に可愛い程度の蚊、これが執拗で際限が無く、数が多くて防ぐ事も撃退する事も敵わず、盛んに火を燃やして牽制するのが精一杯、遂には、余りの痒さに寝ることを放棄せざるを得ない事に成ってしまった。恐らく酷暑により谷川の水が温まった結果だろうと思うのだが、どうでしょうね?。少し油断してつい10分程寝たばかりに、左の腕は30箇所を超える被害、足と云わず腕と云わず、隠した腹まで噛まれる始末、最長老種の生命力は侮りがたく、恐るべきものである事を痛感した。深夜を過ぎた峠道、辺りを覆う深い霧、熊との遭遇には気を遣う。焚火の光景を興味深く眺めていたのは、通り縋りのキツネだけであった。






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