関東では梅雨明けでも関西は梅雨真っ只中。梅雨の合間を見計らって台高は笹ヶ峰へ。今日から夏休みとあってか車が多い。東吉野村に入り、古い町並みを抜ける間にも人の姿が彼方此方に見られる。大股へと続く町並みには、嘗ての賑わいを偲ばせる宿場町の趣がある。その狭隘な街角に人の姿を添えると、古いものがそれ程古臭くも見えない。
何故こんな内陸部の深い谷底に、宿場町を偲ばせる町並みが残っているのか。山名に記憶されているように、伊勢辻をへて伊勢の国への往来は、想像以上の賑わいがあったのか。廃校を利用した温泉の賑わいさえ、往時のそれに遠く及ばないのかもしれない。大又のバス停前を下ってくる3人連れ。いずれもスパッツ等で身を固め、気力は十分に伺える。
谷川に沿った、繁茂する藪で見通しの利かない狭隘な林道を抜けると広めの駐車場である。先行者は車4台。準備の間に更に1台が加わり、さっと自転車を出して下って行かれた。色々な山登りのスタイルがある。急勾配の林道は朝からシンドイ。ガスに覆われた谷底は湿度が高く、風も無いので暑い。
谷川の瀬音のわりに、明神滝の水量は少なく見えた。滝の巻き道を上がると目の前で小鳥の地鳴きがある。杉の皮の色の小鳥が4・5羽。巣立ちしたばかりのミソサザイの雛4羽と、誘導しようと餌でつる親鳥である。水平道になり、見通しが利くようになると微風が出た。登山道に散らばるヒメシャラの落下にも風情を感じる余裕がある。
明神平の大地に上がった目の前に、2張りの色鮮やかなテントがあった。今張り終えたばかりらしい。傍には女性を含む4名と、東屋で佇む4名ほど。どうも男性は働きが悪いらしい。東西の林が伸びてきて、ゲレンデ跡も随分狭くなった。何れは林に飲み込まれてしまう。明神岳は1432m、今日の最高地点である。西からの風を受けて汗が乾く。
急速に落ち込む西の縁に腰掛けて昼ごはん。直に体が冷えるので、じっとしては居られなくなった。食事もそこそこに台高を南に下り、人の踏み跡もまばらな綺麗な尾根が続く。尾根はほぼ全域をブナが覆い、ミズナラ、その他良く分からない樹木も多数。両側はかなり厳しい絶壁らしく、尾根だけは台地状で、緩やかに南に伸びている。
笹ヶ峰は、すばらしい樹林に囲まれた台地である。倒れてもなお枝を伸ばし、あまつさえ、かなりの太さの垂直の枝(これは普通には幹)を数本伸ばしている。笹ヶ峰を越え更に南に歩くと更にゆったりした台地が続く。ここから下り、上り返すと奥の迷峰である。今日は下見が中心なので、ここで引き返し、辺りの地形、特に水の在り処を探ってみた。
東に流れる河川の源頭部にあたり、少し下れば沢がある。西側は傾斜が厳しく、水を探すところではない。一泊するには遜色ないところと断定した。
風に吹かれたアサギマダラや、名前を知らない蝶が舞う。アキアカネは避暑の最中で、御蔭でブヨの被害もまるでない。明神岳から真東に伸びる檜塚方面からは声が聞こえる。明神平には新たなテントが一張り増えた。下りに入り、顔をゆがめた男性が登ってきた。更に、男性二人と女性一人、女性は酷く珍妙な姿である。
林道に下り、谷川に下りると一人の男性と犬。犬は川に浸かって30分らしい。靴を洗う手を、長く浸しているのも難しい水である。
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