■ 若狭・長老ケ岳
・・・・2015年06月07日
2015.6.7

梅雨の頃には長老が脳裏に浮かぶ、尾根のナツツバキの下を歩きたくなる。予報では良くなかった天候は、多めの雲ではあっても雨は無さそう、良いような悪い様な、ナツツバキには雨がよく合う。

仏主の駐車地には先行車が2台、長らく風雨に晒されるまま放置されてきた土台と壁だけのログハウスは撤去され、代わって貯木場らしいものがあった。無残な見物よりよほど健全だ。今日の作業があろうとは思われないが、最上流部の端に停めさせて貰った。そばにあった山椒の葉の鮮烈な匂いも良い。

歩き出す直前に名古屋ナンバーの男性が後ろに付けた、京都から来られたらしい。川の水は濁りがあって、鮎やマスの姿はまるで無い。今日のコースはピクニックと変わらない、雨中の散策ならそれも良い、晴れているなら樹冠が綺麗だ。水源施設前からキャンプ場に至る道を登ると重機の跡が残る。杉林はスッキリとして明るくなった、間伐材は搬出されて林床は整っている。

時折零れる陽射しは暑い、汗を拭きながら見晴らしの良くなった斜面を覗くと先の男性が登ってくる。葉を覆う程の花を点けたヤマボウシなどを見ている間に、その差はドンドン縮まって、集落を見下ろす展望地の前で追い越して行かれた。彼もけして早くは無いのだ。


辿り着いたキャンプ場施設の柵には男物らしいカッパの様な服があり、側に赤いミニバイクがあって、広場の中央の桜の木陰に椅子に座った女性が一人、辺りに人無きが如く絵筆を揮う。ハイカー如きは目に入らぬようで、時折顔を挙げて西の山並みをのみ見る。

名古屋ナンバーは早々に登山道に消えた、トイレによったが知るところでは無いらしい。一等地を占めカッパは展望の良いベンチを占め、没頭出来るところが凄い。大峰あたりから移植されただろうヒメシャラの花が咲き出したところであった。しかし日本海側に無い植物の移植はどうだろう。云っても仕様が無いから登ろうか。

樹林のトンネルに入ったところで賑やかな後続の声が聞こえた、団体さんや!。尾根の東屋跡までは暑かった、これを過ぎるとイワカガミや苔生す綺麗な尾根が続く、色彩らしいものは咲き始めたサワフタギとヤマボウシ、時にネジキの釣り鐘が少し、白色ばかりで面白味にはやや欠ける。

上の東屋でザックを降ろして小休止、林を抜けて賑やかな声が近づく、はよ行こう。ナツツバキの開花は未だらしい、ゲンコツの一つも見えなかった。最後の尾根に乗るあたりは、このコースで一番面白く無い。盛り上がった期待が一瞬にして霧散する場所だ。良くなってきた広葉樹の森は、暗い杉の植林地に飲み込まれて消える。登山道に黒い紐、いやよく見れば黒化したシマヘビであった。小さい可愛い奴で、正面から覗き込んだら怖かったらしい、苛める積りは無かったんだが。

広い尾根道が続いてやはり植林地に抜け、しかし以前は小兎も飛び出した苔の繁茂するところで鳥も多いから許せる。この辺りの植林は山の一部に留まり全山を覆う程のものはほとんど見えない。電波中継所のヘリポートの芝の上でお昼、賑やかな方々がピークに登って行った。

帰りは林道を歩いた。聞きなれた鳴き声はオオルリだろう、だが今日のは出色だ、巻き舌を使う鳥などと云うのは聞いたことが無い、オオリリ恐るべし。樹冠が近いので、ナツツバキの状態も良く分かった、ゲンコツがやや小さい。トビが道から飛び立った、見れば大きなミミズの欠片が残っていた。猛禽類のトビにしては情けない。モミジイチゴは今が旬、大きなものは甘くて美味しい。


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