■ 京都北山・芦生 櫃倉〜内杉谷
・・・・2015年04月26日
2015.4.26

須後の駐車場に先行車は数台、用水から溢れた大量の水は、綺麗に晴れ渡った温かい空気を絶え間なく震わせ、そんな中、用意の整った足元の軽そうな方々が、京大演習林ゲートに向かい、5人迄なら当日の入山届けで良いらしい。

櫃倉方面に向かう方はおられない、トロッコ道を行かれるのだがこの陽気では、山の守神ヤマビル様も蠢動を開始されるのでは無いかと思われ、スニーカーとソックスの組合せは如何なものかと、人事ではあるが気に掛かる。前後に人影の無い櫃倉林道には涼しい風が抜け、先週の寒気の事はすっかり念頭に無くなる程温かく、路面に長く伸び、動作も未だ緩慢なシマヘビを追い立てて、路肩の藪に避難させる傍らでは、花の多いヤマザクラがチラホラ、花びら等を散らしておった。

山側の路肩では、イカリソウが盛りを迎え、この辺りのものは、小さな茎に、色鮮やかな沢山の花を付けたものが多い。白いものでは、技工的な姿のオオカメノキは見るに値する。重厚な、やや小ぶりな葉の上に盛られた花輪はそのまま飾り物になりそうだし、品位を感じさせる花である。

淡い空色のスミレ、カタバミ等は探す必要も無い。この季節の一番はやはり、万葉人の愛したヤマザクラ、柔らかい光沢のある赤っぽい葉と、散りばめられた白い花は素晴らしいの一言。路肩や川面、山腹等を一際明るく照らすのは桜の他に無い。誠に小さな花を付けたマメザクラなどと云うのもあって、林道歩きもなかなかに興味深い。

一時間程歩くと林道が終わり、川を渡って古道を横山峠に進む。雪の消えた急斜面の古道には、僅かに踏み跡らしきところが残り、訪れる人が減っていけば、只の斜面と化すのも時代の趨勢である。峠からは荒れた道型が確りあって、イワカガミやイワウチワの花が満開であった。広い中のツボを抜け谷を遡行、途中の中洲にはささやかなニリンソウ等の花が咲き出したばかりで、いずれも顔を出したお日様を追いかけて、登山者等には関心が無い。

深い谷や谷の落ち込んだ所に雪が残り、森には、瀬音の他にツツドリやアオバトの鳴声が響き、今年も夏鳥がやって来たなと思う側から、自慢らしいオオルリの声が直ぐの高みで鳴きだした。滝の巻道が終わったところで、やっぱりワサビの花と出会った。しかし手の届かないところで、代わりでは無いのだろうが、ハルリンドウが数株、花が開いたところであった。

唯一のゴルジュを抜けると後は、細くゆっくりした流れと、しかし巨大な木の聳える広い谷底が続き、最後に絶壁を登って林道に出ると櫃倉谷遡行の終焉である。この最後が殊に苦しい、がこれが無ければ画竜点睛を欠く事に等しく、これで締めて、後は長〜い林道歩きで周回を終える。全長23km程度、木陰も涼しい風にも恵まれたコースである筈だが、顔が痛くなったのは想定外であった。

ただに長いだけでは無く、サンインシロガネソウなどと、人に云われてあ〜雑草じゃないのか、と気付くような花もある、上谷観光のバスは埃を巻上げ連れなく去って行く、そんな長〜い林道である。



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