鞍掛橋まで、気丈に歩くおばさんハイカー、ゲートも開き、トンネルから楽に登れるにも拘らず、苦労の多い御池谷を登ろうと云うのだから、その意気込みと元気には賞賛を送りたい。送りたいのは事実であるが、今日のところはそのトンネル下から登るべく、鞍掛トンネルを目指してつづら折れの道を走って驚いた。少し路肩の広いカーブは、ハイカーの車で一杯だ。げ〜これではトンネル下は一杯か?、わざわざ確認するまでも無く、ギッシリ詰まった駐車地に余地は全く無い。
止む無く鞍掛橋まで戻って身支度を始めたものの、ゲートが閉まる雪の山なら諦めも付く、何が悲しくて車で走った高度差を足で稼ぐ必要がある、世の不条理に思わず漏れる、仏仏仏。崩壊地の梯子を登って崩壊の進む林道に出ると、件のおばさんハイカーはまだその先にいて、どうした訳か戻って来られる。
途の崩壊が激しく、近年御池谷コースは行かないから、危なそうで止める、という。大分お年の方も混じっておられ、危険なルートは止すのが上策ではあるが、昨年は大丈夫でしたね、と教えて、行ってみる事にした。勿論、危ない様なら棄権を勧告するつもりである。そうしているところへ、お若い、と思う、南こうせつに似たニッカポッカの男性が現れ、颯爽と谷間に消えて行った、様に見えた。
斥候を兼ねて御池谷に突入、無論、昔の事を思えば大いに変わり、途等とよべるものは全く残っていない、がゴロゴロ石の急斜面の谷底は、思いの外登りやすいのだ。振り返ると、おばさん達も続いて来るし、お若い男性、こうせつも後に従う。こうせつは、他のルートに行く予定であったが、道不明により此方に回ったと云う。
それほど困難なところも無く、展望の開ける辺まで登って来ると、浮石が多くなって、落石だけが心配の種、汗を拭きつつ小休止、する間におばさん登山隊も追いついて、思った以上にサクサク登る。結構な斜面も何のその、滑らかな口と同様、淀みが無い。この展開では仕様が無い、どうぞお先に行って貰って、だけど最後尾の方は少々お疲れの体で、しかしリーダは容赦が無い。
おばさん登山隊の落石が怖いので、しっかり距離を開けて後塵を拝する形、こうせつは後ろに付けたが、落石の心配が無くなったところで先に行って貰った、これで心置きなく休めるのだ。斜度がやや緩む辺りで、先行するおばさん達が俄にざわめく。顔を出して、フクジュソウがあったよ〜、早く速く!、と手招きする。は〜い、と返事は返したが、これは違うだろう、、。
おばさんもこうせつも速かった、フクジュソウをカメラに納める間に姿も声も、辺は静寂、ひとりコガラだけが道連れであった。ヒルコバが近付くに伴い、谷間の雪は深くなり、乗ると底抜けで、怪我する前に止めとこう。下りの70に近いという男性と暫く立ち話、鈴北は賑やかだと云う。ヒルコバから賑やかな鈴北に登った、なる程大変な人出だ。
人混みを抜け、薄い陽射しの在る、ぼんやり伊吹山の見える辺りでお昼ご飯、春の霞で霊山は不明、人の往来は途切れない。食後の一服が欲しいところで、生憎資源が切れたところ。とそこへタイミング良く現れた南こうせつ、一本頂いたお返しに、下りの途を教えて差し上げた。聞けば三重県側の駐車地も一杯で、止む無く鞍掛橋に来られたよし。フクジュソウの季節ではやむを得無いとか、しかし過去はそうでも無かった。闊達な御池の山並みを後に、トンネルに続く下山ルートに人波が続く。
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