■ 京都西山・地蔵山
・・・・2015年02月22日
2015.2.22

今年は初めての地蔵山、中腹から上の、裸の林床は一面真っ白で、そこから里にかけては今日の温かさと同様、雪よりも青いものが似つかわしい。駐車した路肩の先の無人の家の屋根は大量の雪が残り、人が住まない家が如何ばかり寒々しいものであるかを雄弁に物語る。

学校の校庭で遊ぶ子供、集落を流れる薪の臭いと薄い煙、木の色も真新しい、新しく普請された小さな納屋、庭の前の畑に出たお父さん、今日の越畑は春の陽気だ。天気予報ではしかし、まだ春一番とは云わないから、これはフライングに相当する光景で、小さな羽虫さえも一緒である。

人の住まなくなった家には春の気配も何も無い、ただ腐敗の色と臭いがあるだけだ。集落を少し登った植林地の藪の中に、よく踏まれた鹿道があった。この冬の狩猟は無かったらしい。峠に登ると吹く風が一段強くなった、ゴーゴー山が鳴る。一面の雪から、登山道を伝って雪どけ水が流れる。今日のものとは断定出来ない踏み跡は、貯まり水の中にあった。

樹林の中に入り高度を稼ぐ度に雪は深くなった。雪に残る踏み跡を辿ると、崩れて嵌ってつま先ばかりで歩くような事になった。植林地を抜けた辺りから雪が増え、気温は3度と足元は安定した。寧ろ雪の階段は歩き易く、風も少なくてコゲラが枯木を突付くほど静かだ。

急斜面を終えるとアセビの林が待っていて、覚悟の上とは云え抜ける空間は殆ど無い。ここまで一緒であった先行者の踏み跡も、楽な抜け道を探して発散してしまった。踏み跡の無いアセビの中はジャングルジムと変わるところが無い、加えて良く嵌まる。匍匐前進でやっと林を抜け、強風の山頂反射板跡地でお地蔵様にご挨拶、誰かが雪を取り除いてさしあげたのか、自然に雪が落ちたのか、お地蔵様は何時もに変わらぬ涼しいお顔であった。

こうした出逢いにどんな効果が有ったのか、北の空に青空が出てそれは拡がりを見せ始めた。神さびた光景に浸っている暇もなく、汗に濡れた身体は風に弱い。直登コースで降る事にして、さてアセビの抜け道は何処だろう。再び匍匐前進の体でアセビの林を抜け、踏み跡のまるで無い直登コースは雪が深かった。

一旦納まった汗が再び背中を濡らし顎から落ちた。急角度の雪面を鉄塔下まで下り、あとは崩壊した谷川の道をゆるゆると下るのみ。予報では雨であったが、車まではもつだろう。


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