あちこち雪の情報があって、夏タイヤのFFでは行けるところも限られる、悩む季節の到来だ。可能ならば、山は大雪、下界はポカポカと、そんな天気があれば望ましい。ある訳ないわい!、と云われるのは覚悟で、希望だから一応わ。
半国山は白くないし、陽のあたる南側斜面の、色褪せたとはとはいえ未だ残るエネルギーは魅力的だ。井出の郵便局横に駐車させて頂き、歩き出すとそれ程も寒くない。それでも気温は5度も無く、先週の陽気を思うと隔絶の感がある。上下各一枚多い冬装備にしての話だから冬本番だ。
冬なお鬱蒼と影をなせる竹藪を抜け冷たそうな谷水を集めた溜池を過ぎ、灌木が繁茂する栗や松の植林地を抜け陽射しの多い暖色に包まれた山道をボチボチ登る。道は軽トラなどが登れる様に蛇行しているから斜度は殆ど無い。それでも暫く歩くと汗ばんで来て、僅かな斜度があれば何処でも汗ばむ程度の運動は可能なのだ。
木の実などを探しながら歩く前方に、十数代の車の列、軽トラもあれば乗用車もある取りとめの無い集団だ。不意に鼻に付いたのは燃える薪の匂いで、狩猟などであれば山は危ない。カーブを抜けた先に佇む方々は、今正に途に着こうと身構えたヤブ掃除の方々であった。お若い人からお爺さんまでおられて、共同作業の体である。
大変な作業の始まりを見てカーブを曲がるとカヤトの茂るのんびりした光景だ。振り返った先には初冬の田畑が広がっている。道の端に紅い実だけを残しているのはガマズミだろう。同じく紫の小さい実を遺すのはムラサキシキブ、この紫は如何にも心細くて頂けない。
サルトリイバラの実は紅いものが少なくて、中にはまだ青いものもある。順当に秋が去って冬に移行したのならこうはならなかったのかも知れない。この点については彼我にそれ程も差異はなかろう。林道終点の側の林には、ウソを始めメジロやヤマガラ、ホオジロなど沢山の山鳥が集まって、見れば松ぼっくりの中の実を食べているようであった。
ガラの仲間が集団を作るのはよく見るが、その他大勢の混成は始めてみた。確かにこの方が安全である事は間違いないのだ。林道が終わる砂防ダムから何処が途やら川やら判別のつかない酷いガレ場を抜ける。嘗ては庶民の道であった筈だが、今では補修する人はいない。
この様にして歩く人があれば、道の痕跡くらいは残せるだろうと思っている。枯れた松が何箇所も道を塞ぐ斜面に入ると道型は寧ろ明瞭になる。豪雨の流れる溝になるからで、毀損する迄は消える心配はない。尾根に着くところで声をかけられた。見ると6人程のおっちゃん達が弁当を手にお昼ご飯の最中、町の境界の整備に来たという。
これも共同作業のようでお若い人からお爺さんまでの混成隊であった。ここからは緩い斜度が半国山の直下まで続く。南側斜面にあって気温0度、植林の中に入ると−2度まで冷えて、汗ばんだ体には少し寒い。不明瞭になった山頂大地の水分はすべからく凍り付いて太い霜柱になっていた。
山頂が近付くと同時に静かな山域に人の声らしい奇声が轟いている。どうやら山頂はおばさんを含む登山隊に占拠されているようで、兎に角賑やかである。山頂のすぐ下にある、ウリハダカエデの明るい林床で休息、残念な事に、毎年色鮮やかな落葉で楽しませてくれる葉に太陽の色はもう無い。抜ける風が一段と冷えたように感じた。温度計を見ると−3度になったところだ。
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