■ 北摂・剣尾山
・・・・2014年06月22日
2014.6.22

夜降り出した雨は、朝になっても止まず、しかし昼前には上がるだろう予想で、気になり出した足腰の衰えのような感覚を一蹴すべく、無人の、霧に霞む剣尾山を見上げた。

雨は既に霧状になり、持った傘はあくまでも念のため、林に入ると、そよ風に呼応して雫が落ちる。足腰の衰えとは云いながら、振り返ってみても、健脚を誇った事実は只の一度もなく、気温の低い冬などに、珍しく、へたばる事無く登りを終えた事があるくらいだ。

今日の様な場合、気温は低めではあるが湿度が高く、歩き始めて数分後には、心臓はバクバク、腰はヨロヨロ、葉叢から落ちる雫よりも頻繁に、大粒の汗がボロボロ落ちる。前後に人影は無く、濡れた登山道に踏み跡も無く、どこで、どんな姿で休んでも、文句を云うものはない。

大日如来坐像の前を過ぎ、能勢を見下ろす巌にも足を運びながら、ついに一度も休まなかった。行者山の上では、まだまだ厚い雲間から、僅かながらも漏れる陽射しで、登山道に薄い影が出きる時もある。風が無ければ、急上昇する体温は、汗を流す以外の対策はないのだ。

ボチボチ登って風越峠、名前の通り風が抜けて涼しい。行者山を過ぎるとルンゼ状の溝が続き、地形からみても風の拔ける処は少い。ザックを下ろし、岩に腰掛けお茶を飲むあいだ、前の枯れ枝に泊まった、やや大型の鳥がジッと見下していた。ペットボトルをしまってもなお動こうとしない。薄いとはいえ眩しい位置にあって、ただ黒っぽく見えた。風も強くは吹かず、人もなく、鳥の啼く声だけが聞こえていた。

赤いよだれ掛けの六地蔵は、雪の季節がよく似合う。真っ白い雪面に佇む赤いよだれ掛けとお地蔵さんは、物語性があった。今日は、夏草に埋もれ、御参りした痕跡も見あたらない。月峰寺跡も同じく夏草が茂り、僅かに、本堂跡の中央部は、焚き火の跡を中心にして草がない。北側の構造はどうだったか覗いてみたが、石積も無く、ただ土塁を築いただけであった。

無人のピークに腰掛けてぼんやり、克り回復傾向のはっきりした空模様、上昇した気温より、汗で濡れた服に吹く風のお陰で1枚引っ掛けたいところ。森と静まりかえった山頂は、記憶を辿っても始めての事、あっちへウロウロこっちへウロウロ、案外に広い。

随分長居をして、帰りによってみたい処は1箇所あった。運が良ければ、都ざさの中で咲く笹ユリのひとつでも、と期待したが、広い笹原にはただ風が抜けるだけであった。



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