木屋谷林道を少しだけ進めただけで、道の荒れようが気になった。至る処穴だらけで、濁っているから深さは不明、下手にタイヤを落としてパンクなどにはなりたくない。ボチボチ進めて最初の橋を渡る手前が特に酷い。
送水管の工場でもあるのか、工事車両の出入口だ。橋を渡ると路面の毀損は少ない、が崩れ落ちた小石などが多くて、パンクのリスクは少しも変わらない。どうやら通行車両が少ないのだろう。マフラーを打ちそうな岩を端に片付けて、何とか駐車地までやって来た。
四駆でもない車両はここまでが限界で、無理して気不味い帰路を辿るよりよほど良い。仕度の間に軽トラが近付いて来て、何やら凄みのある顔で、鑑札を持っているか!、と聞く。この林道への侵入は、必ずしも歓迎されない事を知っていたし、遂に、鑑札等が要るようになったのかと、やはり、鑑札が要るようになりましたか?、と、半ば呆れて聞いてみた。
アマゴ釣りには鑑札がいるぞ!、と身を乗り出して殆ど喧嘩ごし、いや、登山です。え?!、強ばった顔が綻びて、ニコッと笑って、え〜すみません、と上の方へ去っていった。用意が整った頃に、大きなS字カーブを越えた高みを軽トラが行く。
S字カーブを超えた先に、小広い貯木場ある、ひっそりとして近頃使われた痕跡が無い。ここに止めたいのだが、何時使われるのか、年に数度ほど見るだけではまるで分からない。今日は良かったようだがもう遅い。
で、さらに上に向かうべく林道を進むと車止めがあった。道路崩壊のため諸車通行止、四駆と云えどもここまでである。すると、先程の軽トラは、どうやって車止めを外したろう?、鍵等は使わない簡単なものだ。
マナコ谷の手前の林道は工事が終わったばかりらしい。既に補修の終った林道は、ここまでのところ以前よりずっと良い。これならこの先の登山口まで車で可能、あえて入れない方針らしい。ずっと先の木屋谷左岸に続く林道には、今日も重機の唸りが響く。が、そこまで行くと、殆ど林業関係者しか使わない。 重機の唸りの響く植林地に登山道がウネウネ続く。
雲に覆われた空から、時折陽射しが差し込む山腹は涼しい、少し休むと寒いほど、風もあって快適な上り勾配が続く。快適とは云っても所詮は植林地、杉林の下ではハシリドコロくらいで他に見るものは少ない。同じ密度で生える杉の樹間からは景観も無い。
それでも、間伐が入り、良く手入れされた植林の林は山に数えても良かろう。そろそろ、植林が切れるあたりの、背の高い自然林は際立って瑞々しい。植林が切れると、目の前に、樹木のほとんど無い山腹が拓け、ずっと上の方に、檜塚から奥峰の麗しい尾根が顔を出す。
振り返ると、登ってきた木屋谷、向かいの馬駈場から北部台高の峰々、木屋谷源頭の森から国見、水無が全部一度に広がるのだ。ここまでまるで展望が無かった穴埋めとは云いながら、これはどうしても足を止めざるを得ない。
樹木のほとんど無い地表は、背の低いミヤコザサが覆い、間をヒカゲノカズラが覆うのである。ヒカゲノカズラは苔の仲間(ではなくてシダ類でした)だが、陽のあたる場所を好み、名前とは違う。だだっ広い斜面の樹木では、そろそろ終わりにあたる満開のカマツカ、ゴヨウツツジは既に花期を終えていた。
|