■ 京都西山・地蔵山
・・・・2014年04月20日
2014.4.20

車を降り、集落の路地を歩くと薄日が射して、気のせいかとも思いながら狭い道に目を落とすと、間違いなく影がある。陽射しがあれば花は開く、雨は心配する程でも無いだろう。

芦見疎水に沿って林道のゲート、おや?、ゲートを開きっ放しにした者がある。鹿や猪の所謂害獣対策であるゲートが、開放される事は滅多にない。少し登った処に四駆が一台、どうも地元の者らしい。

崩壊地の手前にも軽トラが一台、人の気配は全く無い。崩壊地を超え、峠までの一番厳しい辺り、滲む汗を拭いつつ、ふと挙げた顔の先に、背を向けて立つ人影が一つ、肩から突き出すのはライフルに違いない。

狩猟期でも無いこの時期に、、、未だ猟をされるんですか?、いや、害獣駆除です!、鹿ですか?、この途は安全ですか?,山ですか?,山なら大丈夫です!、途から下だけです!、と云いながら、灌木の藪の斜面を見下ろしている。

直後に、下の方から叫び声が聞こえた。銃声は未だ無い。若葉が芽吹く様になったこの時期でも、鹿は人里に出るらしい。開闢以来続く光景だが、鹿にしても、恐ろしい人の住む範囲は広がり、森と人家とがごく僅かな藪で繋がっていた頃とは、比べものにならない程の危険を犯すことになる筈だ。臆病な動物が、何でそうした危険に挑戦するのだろう。

考えている間に峠に着いた。峠から先の林床に緑は無い。照葉樹を除けば、葉は未だ膨らみ始めたところである。少ないながら、頭を擡げたばかりのワラビがあった。森に、鹿の食料は無い。

そこへいくと人は暢気だ。硬いコシアブラの芽を見ても、あ〜まだ髄分早い、で終わりである。腹よりも、手袋の無い手が冷たい。風は轟々山を鳴らし、時々、木々が擦れて不気味な音を立てる。乾いて土色の林床に、パラパラ、落ちてきた。気温は、5℃も下がって、汗で濡れた身体は冷える。

冷えるけれども額に汗は滲むのである。花を見たら、この天候では蕾かも知れないが、直ちに帰ろうと思っていると、二葉三つ葉は沢山見ても、花の一つだに付いて無い。とうとうピークのお地蔵さんに挨拶する事になった。この天気で、お地蔵さんのご機嫌も良くない、と思える横顔だ。何時でも真っ先に咲くお地蔵さんの側の花もまだ咲かない。

いよいよ空は荒れてきて、この上は、さっさと帰るにかぎるのだ。お地蔵さん、さようなら、と降った直登コース、馬酔木の林を抜けた辺りの枯れ葉の上で、雨の降る薄暗いこんな日に、あたかも待っていたかの様に、花を開いた個体があっちに二つ、こっちに三つ、あわせると十あまり。

あとは一目散に杉林を降り、鉄塔側では風に押されながら、集落裏まで戻ってきた。一服付ける間に思い返しても、銃声の一つも聞こえなかった。今日も害獣駆除は失敗だったかな。


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