県道を走行中、どうも、何時もと違った雰囲気に気が付いた。駐車地の火打岩の桜はちょうど満開、せっかくだから、遠山の金さんよろしく、満開の桜の花の木の下に、車を置いた。日頃の労いも含んでいる。
ここでふと気付いた、走行中の疑問に答えをみつけた。確かに今日は天気は宜しくは無い。また、先週程では無くても気温も低い。が、如何に何でも人が少な過ぎる、身渡したところ、ハイカーも他に無い。これはひょっとしたら、消費税増税と先月末までの活況の結果、今月は各自家に篭ってやり過ごす作戦なのか。ゴールデンウィークまでの籠城作戦か、果たして上手く行くだろうか。
何しろ桜は満開、梅の花は僅かに咲き残り、鮮やかなピンク色の桃が盛りで、加えてヤマブキの花も咲いている。スミレは云うに及ばず、春の花が咲き始めた。山腹から山頂に掛け、白い色を散らすのはコブシと山桜花。
子供の頃の記憶では、ヤマブキの花は6月であったようだ、太田道灌も同様に梅雨に掛けているので、間違い無いだろうと思うのだが、現に目の前で咲き始めた花は如何ともし難い。そのような変種も有るのだろう。
杉の林に入ると春独特の匂いが溢れている。ヒサカキの花の匂いで、春はそもそも腐敗の季節、その種の匂いがあっても良いだろうと思うのだが、人によっては嫌いらしい。気温は12℃で、久しぶりに汗が零れる。杉の林が切れ、飛び出した二次林の明るい広場、小さな小川が流れ、枯葉色の地面に、クリンソウの芽だけが瑞々しい。広がる空に、もう少し光があれば良いのだが、雲を通して薄い影を作るほど。
1000年前に栄えたと云う福泉寺跡の可笑しな顔のお地蔵さん、降って来たのはお若い男性2人連れ、籠城の皆さんに代わり、消費税にも負けていない。少し降ってからは岩の多い登りが続く、なかなかに応えるコース。この後の、オオタワからの登りを思えばまだマシだ。
岩の上から見る山腹は、ビッシリ花を付けたコブシだらけ、ツツジなどは来週には咲くだろう。小金ヶ岳ピークに人は2人、見下ろした北壁にも人影はない。何時でもハイカーの多い人気の山でこの有り様。のんびり出来て良いようなものだが、今日の天候の様に何だか寂しい。
お二人が小金口方面に降ると他に人はいなくなった。ガラガラ落石させて降った苔の上に、やや見頃を過ぎたバイカオウレンが数株、思えばこの花もまた、厳しいところだけを選んで咲く、孤高の花の一つである。
近頃はクリンソウで有名になったが、オウレンやイチリンソウの群落もある貴重な山域だ。鈴鹿の北部と同じ石灰岩の地質で、鈴鹿より良いのはヤマビルが居ない。登りはじめの山には何時でも鹿の警戒音がある、が、ヒル君はいない。故に、何時でものんびり山歩きが出来る。その山域の基地であるオオタワに、車はたった一台である。
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