昨日は確かにやや冷えた、よもや降雪になっているとは思ってもいないから、やはりこの時期は鈴鹿に行きたい。屋根にこそ雪は無いものの、直ぐ上の山腹からは真っ白だ。温かくなる筈の週末は先週より寒い。
河内集落まで数カ所、河川改修の工事中、にも拘わらず流れる水は変らずに青い。鍋尻への登山口前に車が1台、道を教えて戴いたお祖母さんの家は、静まりかえって気配がない。不安な橋を渡って森に入ると雪解けの雫が酷く、途は泥濘みよく滑る。これでは、霊仙などは田圃の様になっているだろう。などと他所事を想いながら尾根に着く。
上の雪は更に深く、とてもフクジュソウどころではなさそうだ。回復傾向にあるとはいいながら、陽射し一つ射さない岩場では、やっと見つけたミスミソウは固く花を閉じ、撮影も難しい。
咲き始めたシロモジの黄色い花にも精彩がない。先行者の踏み跡が2つ、お地蔵さんの所在を知らないのか、挨拶もなしで林に続く。雪に埋もれた、顔の風化した小さなお地蔵さんの雪を払って暫し休息、今を除けば、訪れる人は有りそうに思えない。文字通り風雪に耐えてきたお地蔵さんだ。
杉の林を抜けるとズルズルの急斜面が目の前に立ち塞がる。真っ白な雪面には、先行者が残した足跡だけに泥がある。ときには、悶え苦しんだ様が目に浮かぶ、揉みくちゃにされた泥場が残る。敬して近づかぬ様にしてはいても、振り向いた斜面には泥の途が残る。
どうにかこうにか斜度が緩み、展望の良い尾根に乗った。鍋尻山は目の前に聳えている。風に吹かれると汗が冷えて風邪をひく、風のない南側斜面の雪を踏んで小休止、折良く差し込む陽射しが温かく眩しい。
南の彼方に御池岳あたりの山並みが続く。東には、もっと泥まみれが予想される霊仙、が山頂あたりはガスで見えない。人の声に振り向くと、先行者二人が降って来たところだ。前が男性で後ろが女性、踏み跡から想像するに、負けず嫌いの女性だろうと思う。これ以上は控えた方が憂いがない。
最後の鍋尻への登りもまた結構な斜度がある。加えて灌木の林もあれば、石灰岩の露出も多い。更にこれが雪の下であるから剣呑だ。お二人は、有無を言わさず直登された、いわば力ずくの登山である。山腹を南側に巻くように進み、最後はやや広い雪面にジグを切って山頂に着いた。最後の斜度は相当であったが、雪のお陰でかなり楽。
絶望的ではあったが、早速フクジュソウの群落へ行ってみた。行ったのは良いが、何処がそうであるのか、杳として判らぬ。ウロウロする事半時間、雪は深いし、無闇に踏めば花を傷つける。そうこうしていると、保月側からハイカーの声が響く。これもまた同じ想いをするだろう。
風のふく山頂に戻り、時折降ってくる雪の中での昼食を断念して、お二人の踏み跡を辿った。力ずくだけあって、とんでもない藪の間を拔ける様な処もある。そんな処は脇に新たな踏み跡が出来る。
大分降った処で、お爺さんとお婆さんと犬のパーティと行き合った。ここからの降りは更に大変、ドロドロのクチャクチャで足を置いたらまず滑る、登りより疲れる行程であった。雪の消え始めた岩場では、固く閉じたミスミソウ・スハマソウの姿もチラホラ。陽射しが無いのが残念であった。 |