■ 台高・薊岳〜明神平
・・・・2014年01月12日
2014.1.13

恒例になったかの様な台高薊岳、北部は雪で路面が危うい、FF車で可能な処はこの辺りまで、大又の貯木場から先へは行けない。気温の低い今日の様な日に、歩き出しても車が行く、明神平は盛況だ。

集落最奥の犬がいた家、骨格だけ残して炭になった。燃え残るあたりからは今でも煙が昇る、24時間は経っていない。気になる犬は、少しだけ下った倉庫ほどの建屋にあって、盛んに尻尾を振って吠え立てる。うち一匹は付いてきて、これは伊勢辻の途中まで付いてきたやつだ。

今日のところは少しだけのお供、住処の惨事は知っているらしい。見渡せば、多くも無い沿道の家に人の気配は認められない。既に無人の家が殆どである。笹の神社を抜けて上の道、立派な家も、左端の木造の離れから腐朽がすすむ。

杉林の林道に入って気温は−2度、風が無いので温かい。暫く歩くと汗が滴る、それにしても鏡池はまだかいな。樹林越しに見える台高の尾根は、雪は無さそうだが霧氷に覆われ、右の尾根から降り注ぐ陽光、さぞや綺麗な事であろう。道中の杉の林にもブナはある。小さくて細くて、冬になっても葉を落とす力も無い。侘びしそうな枯れた葉を春まで付けて、それでも枯れずに新芽を付ける。もう少し光があったなら、不用になった杉の大地の再生の、先駆けくらいにはなるだろう。

鏡池と間違える尾根は明るく、大普賢岳ののこぎり頭が見えている。この辺りから雪が現れ、降ったばかりのサラサラの雪が表面に、その下には固く凍った雪がある。雪が出ると、登山道には新しい踏み跡が一つと数匹、人は今日の物で男性だ。数匹の主はタヌキが主体で、小さいのはテンだろう。高みを目指して登って行く。時に寄り道しては、木の根あたりをうろついている。ネズミでも探した跡だと思われるのだが、雪の山は猟に良いのだろうか。上は兎に角寒いのだ。

大鏡池は風もなく光に溢れたスポットであった。眺望が無いのを無視すれば、光のある間はひねもすグズグズしても充分に美しい。これより尾根に出ると風が厳しい、故に寒い。気温は−6度を指している。

光の中は眩しいばかりに煌めき、寒い尾根上を避けた南側斜面は風も届かず穏やかな光に溢れとても温かい。雪は5〜60センチ程で締まって歩きやすい。先行者は寒くて歩き難い尾根心にトレースを残していた。その様な尾根を避け、出来るだけ南側斜面を水平に歩いたが、後続の方々はどちらを行くだろう。ピーク手前の尾根は登らざるを得ない。霧氷の着いた枝は垂れ下がり、進むべきルートが難しい。

ピッケルで右手を確保して左手は木の幹を掴んで、結局のところ、アイゼンがあれば両手が空いている方が楽であった。ピーク手前のキレットを超えて、着いた薊岳は無人である。目の前の、スックと立った枯木の中程に、白いフラッグができている。

途中の南斜面で昼食は済ませた、あとは下山するだけ、なのだが、前山までは遠い。遠いのは苦にもならないが、一旦下ってまた登る。これはいつ歩いても堪える。あれほどあった日差しは、前山が近付くに伴い減少し、紺碧の空は探しても見つからない。

遠くの山の端の辺に暖かな色彩が漏れているのを見るだけで、前山から見下ろす明神平・明神岳・檜塚あたりは氷の世界である。モノトーンの世界では距離感に異常を生じる。異常の生じた林の中に、原色のテントが数張りあった。羨ましい、火でも起こせばそこだけ世界が生じる。

泊装備のパーティが下る、雪はあっても氷はない。上の駐車地から下は、踏まれてテカテカに光る路面があった。お陰で滑って転んで、尻と左中指が少し痛い。林道終点近くの駐車地に車は7台ほど、恐らくは泊である。途中の橋の辺りにも数台の車があったが、これは安全を考えての事だろう。


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