 平野のたかすみ温泉まで雪は全くなかった。冬型が緩み風も少ない。ところが関西のマッターホルンと呼ばれる高見山の山頂部は白い。ツアーさえ出来る有名な樹氷を見てみよう。雪があればとてもここまでは来られない、今日はタイミングが良かった。
夏場に一度登っただけだが、その時でさえ山頂近くの尾根では西の風が強く吹いて寒かった程だ。今日は駐車場付きで、下山後は風呂さえある。恐らく入る事は無いだろうが、それでも責められる事も無さそうだから気楽である。
用意の間にも続々と車が増え、全て山装備であるから驚いてしまう。それに若い人も多い。比良の武奈ヶ岳程では無いが良く似ている。用意が整うと案内に従い川の土手に出る。綺麗に整備され、惜しいことに川に魚影が全く無い。水は冷たそうだが夏場なら別。
赤い橋を渡って登山道に入る。途は谷川に沿って徐々に高度を稼ぐように作られ、流れも程よく夏場などでは相当に気持ちの良い場所で有る筈なのだが、残念な事に荒れきっている。傍若無人に放置された間伐材に、山も川も覆われていて、殺伐とした雰囲気に覆われている。
途はしっかり整備され、毀損部にはスチール製の板が設置されて安心して歩ける。薄暗い植林地の先に小屋が見えた。お若い男性三人組が休息中である。少し先をずっと歩いていたのだが、ここらで二息ほど入れるとみた。
樹齢800年の高見杉を見て、登山道を雪が覆う。ラッセルの必要は無さそうであるが、壺足だと多少滑る。そろそろ下りの方々と出逢うようになり、見ると半分の方は軽アイゼン装着である。アイゼンは重く膝にも負担だ。危険な所もないのでこのまま行こう。
小峠コースからの踏み跡も相当にあった。植林が切れ、ここから自然林の中を行く。やや増えた雪と傾斜で靴が滑る。滑る斜面に尻セードの痕跡があった。尻は大丈夫だったのかな。斜度が増すと先行する方々の歩行速度も鈍ってくる。合わせて枝先の霧氷が日射しに煌めいて足を止めさせる。気温は−4度で風があって痛いほど。小さな針金を集めたような霧氷は綿菓子を連想させた。
もっとも風の強く吹く辺りでは樹氷のモンスターが出来あがっていて、殆どコチコチの氷と変わらない。ピーク手前の水平道は、風も届かず日射しの溢れる樹林の中は眩しい。ピークの小屋は満員で、屋根は煮炊きの必要な方々、神社の前ではカメラ片手の男性数人。神社裏には風も無く日射しもあって、夏と全く同じであった。
当然先行者はおられ、少し先の雪を均して休息場所。大峠方面から登ってきた男性一人。後からは、子供も来るし犬も来る。ただしこの犬は防寒着装着であった。一休みして場所を明け渡そう。休息中は5度あった気温も、霧氷の最も綺麗な斜面では、忽ち氷点下に変わった。汗で湿った下着が寒い。
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