■ 京都西山・芦見谷北尾根〜愛宕山
・・・・2013年10月27日
2013.10.27

ギンナンを拾うおばあさんの前の、山の端から覗いたばかりの陽射しに照らされた柿の鮮やかな色彩、これだけを見れば豊かな実りを迎えた山里である。

先の大雨による被害は至るところにあって、今日はまた出合い仕事ででもあるかの様に、彼方此方に里人の姿がある。集落の裏道には、道案内を買って出た雄のキジが先を歩く。

芦見峠への途を昇ると、2年前に流出した芦見疎水の前の山道は、更に大きく流出していた。踏み跡は流出土砂を踏み越えて続き、疎水トンネル出口にあった小さな祠は健在であったかどうか不明のままだ。

芦見谷川の対岸にある尾根は数回歩いた。今日はこれを歩き、首無し地蔵から愛宕山まで歩く。水の多い川を渡って登り易い斜面に取り付く。暫く尾根先端に向かって藪を漕ぐ、すると僅かに残る途形が現れ、ジグザグに急斜面を登っている。

倒れた枯れ松や藪に遮られた途ではあるが、如何にも厳しい途である。愛宕山への参詣か越畑への交通路か、何れにしても労苦を物ともしない精神の持ち主が歩いた途だ。芦見谷川の瀬音が遠くなり斜度が緩むと北東と、芦見谷源頭へ伸びる尾根に合わせた南東への途がある。

古いテープが所々にあって途を示す。時には名も知らぬ尾根などを歩いてみたい方があるらしい。テープに沿って歩くと馬酔木の藪がある。テープの古色と合わせると歩いた年代が凡そ知れよう。北側は藪が少なくて歩き易い。迷う様な複雑な地形も無く、高みに進めば尾根心は付いてくる。

それにしても北風は強く冷たい。北の空は薄暗く靄が掛かったようで一挙に冬を思わせる。気温は10度で手袋が欲しい。目の前のシラキの葉は僅かに色付き始めたばかりである。南の空に目を転じると暖かさに満ちた青空があって、何処かに逝く夏を惜しむ心持ちがあった。

ピークを超え暫くすると再び明瞭な途形が表れ、イノシシに荒らされ掘り返された溝は歩き辛い。目の前で、地響きを立て転がる様に藪に消えたものがある。きっとイノシシだと思う。

尾根心に、凸形に残る途は歩き易い。相当に踏み固められた途は壊れない、芦見峠の崩壊地は重機で作った道である。今でも各地の山地に残り、生活道路であった途だと思う。

竜の小屋への分かれを過ぎ林道終点から首無し地蔵へ向かった。綺麗なすすきの原の下方に京都の街が鮮やかに見えている。南斜面になり風の少ない愛宕山への尾根歩きは暑かった。温かさと冷たさを繰り返す間に、短い秋の紅葉は進む。


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