■ 京都北山・中山谷山
・・・・2013年10月06日
2013.10.6

台風による大雨で増水した痕跡が至るところに見られる由良川を遡上、藁葺の家で人気の北集落の道の駅の一部も冠水の被害にあったようだ。あれから3週間、朝早くから詰めかける観光客で、冠水した駐車場も賑わっていた。

尚も遡ると、ギリギリのところで持ち堪えた川辺の建物などもあった。見たところは大きな被害に発展したようなところも無く、平穏な日常であるらしい。ビレッジラインのある五波谷の入り口には、木の搬出作業があるから注意せよといった警告と別に、全面通行止の標識が出ている。

春先の雪解け水で増水した時にも、同じ様な事があった。果たして今回はどうだろう。搬出作業は日曜日だから心配は無い。昼なお暗い林道には流水の跡があって小石が多い。川から僅かに離れた土手では崩壊箇所も数か所あった。が、どうにか林道は無事である。林道に流れ込む小さな谷川が運んだ土砂も、多くは林業関係者によって除去された後だ。

泥の覆うあたりは徐行運転、対向車がないのはやはり大きな被害があったに違いない。再びあった全面通行止のサインの手前に駐車した。五波峠は遥かに遠い。ならば近くの尾根から登るのみ。と云ってもかなりの急斜面ばかり、鍋の底の季節は去ったが今日は夏である。取り付いた藪の灌木を頼みに、ソロソロと高度を稼ぐのだが、汗は吹き出すは吐気はするは、心臓は早鐘の如くで抜ける風は湿っぽく温かい。

5メートル進んで小休止、汗が入って目が痛い。この時期はマムシも怖いがスズメバチはもっと怖い。よろよろしながらも気は抜けないのだ。緩み始めた斜度が再びきつくなった。苦しい!、がこんな時はスマホで位置確認をしよう。ズボンから取り出したスマホの画面は汗で濡れている。

一応防水なので、こんな時こそ頑張って貰わないと意味が無い。ちょっと落としたくらいで底の抜ける心細い防水だが、このくらいは耐えてくれるだろう。歩き出す前にロガーをセットしておいたのだ。どれどれ、お〜実に鮮明かつ正確にトレースしている、現在地も明瞭だし、問題の電池は・・ま、何とか合格点のレベルで持っている。一つ玩具が出来た。

と、関心している間に疲れも飛んだ。長く休むと足にも障る、目の前の急斜面を超えれば緩斜面、その後二つ、急な斜面をこなせば緩い尾根に出る。綺麗に笹の消えた尾根のコシアブラの樹形が気持ちが良い。タカノツメと同じく、天に向かって手を伸ばす如くに、真っ直ぐに伸びる。更に急斜面をひとつ超え、どう云う作用か、地を長々と這った後、同じく天に手を伸ばすコシアブラがあった。

最後にもひとつ斜面を超えて尾根に到着、ここからは散歩くらいでピークに着く。ウラジロの実もアオハダも、たわわに色付いた赤い実が見える。ウラジロの実を取り噛んでみた。小さいので水分が足りない処をどうにかすれば、リンゴの様で結構旨い。

こんなに豊作なのに熊は何をしとるのか!、と、目の前の小さなウラジロの枝は折れ、周辺の実は綺麗に無い。細い幹には小さな爪の跡があった。小熊の仕業に違いなく、そうして落ちてギャン、と云ったに違いないのだ。親熊も驚いたろう。

中山谷山のピークは無人である。近頃の踏み跡らしいものも無い。下山を先に伸ばした、腑抜けのような、冗談にも似たアサギマダラの飛翔する様をみるだけである。暫く休んで五波峠へ向かった。下山に入っても汗が出る。櫃倉谷の方から、10月に入った今でもツクツクボウシの鳴き声が聞こえる。あ〜まだ夏なのだ。

峠にも、全面通行止の警告があった。林道をテクテク降ると少し先に斜面の崩壊地があり、軽トラ程度なら何とか通行出来る程度の補修はしてある。これでは通行は困難だ。すぐ下に、乗用車が1台止まっていた。無人であるから八ヶ峰登山だ。よくここまで来られたものだ。もっと下なら随分歩く事になるのは覚悟か。

通行不能箇所はこの一箇所だけで、木材の集積地辺りもご迷惑にならない程度に通過出来そうであった。虫に食われ葉脈だけを残すミカエリソウには背筋が寒くなる。駐車地の側で川原に降りて顔を洗った。その足元を襲う尺取り運動の主、誰あろうヤマビル様のお出ましであった。恐ろしい〜〜、五波谷も彼らに占領される日も遠くない。


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