■ 大峰・熊渡り〜狼平・日裏山
・・・・2013年08月04日
2013.8.4

コマドリの囀りが、いつにも増して賑やかに響く。視界は10メートル、この様な暗い早朝は、紀伊半島で増加中のクマに気を付けよう。鉢合わせでは、お互いの為にならないのだ。

高い梢のあたりでパラパラ葉を打つ音がする。林床までは届いて来ないのだが、雨の用意があっても良い。ガスの中は16度、汗は出ても大変に涼しい。

陽射しは全く無く高野辻あたりも霧の中、もっとも霧の中にあるのは此方の方で、下界に近付けば灼熱の太陽。黒いシルエットが近づいて来る。勿論クマでは無く人である。

随分早く下山される。短パンと半袖の男性である。さぞや寒かった事だろう。暗い足元に、花を開いたオトギリソウ。

そういえば、数年前にはシモツケソウのピンクの花が一際目立ったものである。今は何処へ行ったやら。頂仙岳の巻道の終わりで、単独ハイカーが下って来た。此方は充分な装備に笑顔もある。

高崎横手に差し掛かり、背の低いシラビソの影に混じって鹿の姿がある。どうも此方が見えていない様子、大きな目だが視力は良くは無いようだ。驚かせるのも気の毒なので、此方から声を掛けてみた。

此方に敵愾心のない事が分かったのか、いつもの様に忽ち姿を消してしまう様子も無く、僅かに登山道を離れて此方を伺っている。その距離2〜3メートル、立ち止まって観察しても逃げようともしない。時折パラパラ音のする霧の中の事である。

手持の水が無いので狼平に降った。途中の水場は滴がポトポト、大峰の降水量は少なかったらしい。小屋裏の川辺で湧水を汲み、高崎横手まで登り返して日裏山を目指した。霧の中だが小鳥の囀りは常にも増して賑やかである。

悲鳴に似た鹿の警戒音には驚いた。数メートルで聞いたのも初めてだが、やはり逃げ隠れしないのだ。鳥といい鹿といい、こんな霧の中で何故こんなに元気だろうか。日裏山ピークの苔は枯れている。

水が少なかった事によるとすれば、今日の霧と小雨を歓迎しているのは生きとし生ける物全てである。日裏山で当初の目的を達成し、大峰三山の展望所へはどうしよう。霧が晴れるような様子も無い、今日はここ迄としよう。

日裏山入り口に、登山者カウンターが設置された。環境省による遊歩道計画は進行中だろうか。詰まらない事ばかりに血道を上げるものだ。降りに入ってお二人が新たに大峰に入山した。何れも軽装、暫時の後、やや強い雨が降ってきた。流石にブナの葉だけでは防ぎ切れない。

膝の痛みが出てきた頃、林道終点に到着した。やれやれと休む頭上に強烈な雨、雷は無くて幸いだったが、カッパの抑止力をも上回る勢いで、ザックもズボンも濡れてしまった。川迫川の両岸には、雨にも負けず、大輪のテントの花が咲いている。大雨にならねば良いが。


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