大峰は暑いし台高はなんとか水に親しむくらいは出来そうだが、何れも雨に遭う懸念がある。今日あたりの気圧配置だと、とんでもない豪雨に遭いそうな気もする。
近場のせせらぎで涼を感じられるところは、芦見谷があった。大雨でも避難に時間は掛からない。越畑集落入口に近いお宅の脇に車を止め、歩きだしたばかりの畑には、色付いた桃が数個ばかり、隣の木には未だ青いリンゴがこれも数個。何れも丈の小さな木であった。
集落のメインストリートを歩き、といっても山側の家には空家が目立ち、荒廃の兆しがあちこちにある、その1軒のおばさまから声を掛けられた。因みに、越畑の方々は我々余所者によく声を掛けられ、山や天気の話をする。
もぎたてのトマトがあるから持っていけと云われる。見ると良く熟れた美味しそうなトマトである。有り難く頂戴してザックに入れた。もしかしてお一人かも知れない。山で土産でも見つけたら、きっと持って帰ってお礼としよう。
しかし、考えるとこの時期の山には何も無い、花さえも無いのである。採れた時の事とする。芦見峠は割合に涼しい。抜ける風が冷たいのは、草木の葉の上に泊まった露のせいである。近頃は、朝露などはすっかり忘れていた光景だ。
芦見谷の取水口から下流にも水流がある。それほど多い様には見えないが、下に流せるだけの水量があるのだろう。芦見林道も涼しい。陽射しの中で煌めく清流は何とも涼やかで、広めの淵などがあると、一風呂浴びたくなる。
と、暑苦しいエンジン音を響かせて、オフロードバイクが数台、林道終点を目指して登って行く。むむ、許し難い、と思ったのは束の間、林道を維持出来るのは、やはり車バイクの通行が有ったればこそ。止むを得ない。
林道終点で寛ぐ5人のライダーを擦り抜け谷に沿った登山道を行く。路はガレてバイクでは川に落ちるだろう。更にその先は大岩の転がる中洲を行く。どうだ、ここまでは来れまい!、と勝誇った気分である。
竜ヶ岳出合いの先に、お二人のハイカーがいる。ここで右折し、芦見川を詰め登る。水音は小さく、ユリ道は谷川に沿って渡渉を繰り返す。渡渉地点には石組があり、ユリ道が貴重であった頃は橋が整備されていた。
愈々流れも細くなり、最初の湧き水の噴出する場所で、頂いたトマトを冷やしエネルギーを補給した。トマトの美味かったことは言うまでもない。風が涼しいので、濡れた身体には些か寒過ぎた。気温は23度、時折吹き下ろす風にヒンヤリした空気が混じる。
水と別れて愛宕山三角点の下、北の空は1面黒い。とはいえ上空には陽射しもあって暑いのである。が、地蔵山に続くアセビのトンネルは、陽射しを綺麗に遮って、涼しい風だけを届けてくる。
あまり休むと眠気が襲う。ピークの二体のお地蔵様に挨拶を済ませ、峠に戻った時には雨はすぐ側まで迫っていた。で、お土産は何も無い、次回の課題としておこう。未だ青くて硬いサルナシは、ここ京都西山にも多量にあった。夏休みの、甲高い子供の声が聞こえる。
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