こんな真夏の高見山に登ろうと云う奇特な方がおられるのが先ず驚きなのだが、それも一人では無く車数台の人で有るから尚の事である。何故に冬の山を登るかといって、時宜を得た山が無かったからで、単にそれだけである。
目の前を60リッターほどのザックを担いだ男性が行く。台高の端から縦走と云う事だろうか、生真面目な人に違いない。旧南伊勢街道は二回目だ。ぼちぼち歩いても小峠までは楽な路が続くのだ。楽な路でも熱帯の登山はやはり暑い。
石を敷き詰めた綺麗な路を、紀州の殿様も歩いたそうな。参勤交代なら数百人規模の行列が出来た筈で、しかし真夏にはやらないだろうから、暑さに喘ぐ姿は無かったろうな。
あれこれ想像しながらも汗が落ちる。当局の皆様を騒がせては申し訳ないので、ここは休み休み行く方が良い。南に開けた辺りは陽射しがあって暑い。国道を走るバイクの騒音は尚更暑い。僅かな木陰で休息中に、お若いアベックが涼しげな顔で追い越して行った。彼らは熱帯の住人だろう。
ぼちぼち歩きでも歩いてさえおれば何時か山頂には到達する。距離も無い山を何故急ぐ必要がある。ゆっくり歩いていると不快な音が聞こえてきた。加えて雨もポツポツ。ちょうど誂えた様な休憩場所がある。
雷が終わるまでまずは休みだ。雨と同時に風が起こる、涼しい、別天地だ。雨は収まっても、雷は続いている、が音は小さい。腰を上げて暫く歩くと小峠である。車道で大峠へ向かおうとしたのだが、厳重なゲートが通せんぼ、この先道路崩壊で不通、だそうだ。
止む無く引き返して探した登山道、上の鳥居の後ろに続いている。斜度は厳しいが、距離は短い事を信じて登ろうか。植林がきれると二次林が出てきた。もうピークじゃ!、と思ったのは平野コース出会いであった。ここからなおも路は続く。何処が楽なコースなんじゃ!。
既にお昼に近く、ぼちぼち下りの方と出逢うようになった。多少とも急がねば。風は強くて暑くは無い、寧ろ寒いくらいな気温である。そこかあそこかと探しながら行くのでなお遠い。高見山は初めてで、地図もロクに見ていないのだ。
水平道になって直ぐ狭い尾根が見え、これが高見山ピークであった。なんとも狭い、冬にはツアーもある位で、相当規模の山頂広場、などを想像していたが、狭い斜面に小さな避難小屋、奥に神社があって、その先は、山から落ちる。
落ちたところに誠に僅か、芝の平坦地があり先のアベックが占拠している。小屋の中と上には想定外の人がいて、残るは神社前くらい。強い風が吹き身体が冷える。行儀は悪いが、ウロウロしながらパンを齧る。
そうこうして居る間に、アベックは大峠方面に降りはじめ、空いた芝の上は風もなく、陽射しもあって別天地。北の山並みには室生火山群、南の台高の山並みは雲で殆ど判別不能。東には、谷底にへばり付く小さな集落が三々五々。
横を、大峠に向かって降りはじめたおじさま達が通る。と云うことは、大峠から降るのだ、と云うことは、道を歩く事くらいは出来るのだ。13時になったので、彼らを追いかけて大峠へ。このルートは間違いなく短い筈だ。結構な斜度も、暫く歩くと緩んできて、くの字の幅も狭くなった。下の方から声が聞こえる。下りには自信があるのだ。
無人の大峠は廃墟のようである。1年ほどは車はおろか、立ち寄る人も無いかのようだ。車道を下ると小さな崖崩れが数カ所、その先に、想像を凌ぐ崩壊地があって道は完全にない。現在も復旧作業が続いているようで、重機などが側にあった。乾いた木の根や岩を跨いで越えはしたが、雨が降ったら危ない。
小峠からは、選択の余地無く登った古道をピストン、小峠辺りに車は無かったようだが、おじさま達は何処から降ったのだろう。国道に降り立ったところへ真っ赤な顔のサイクラーが通る。熱帯の過ごし方がいまいち分かっていない様だ。(´・_・`) |