■ 若狭・長老ヶ岳
・・・・2013年06月23日
2013.6.23

梅雨らしい湿り気たっぷりの登山口、空には一面の雲があり、高目の山頂辺りはガスに包まれて見えない。谷川の水は少なく、やや濁りの混じった流れである。

谷の瀬音に混じり、郷愁を誘うかのようなカジカガエルの鳴き声が木霊する。あ〜初夏だな〜と思わせるようなホタルブクロの白い花。林道分岐に大阪ナンバーの四駆が一台。

舗装道路を上り詰めると明るい施設の前、集落を眼下に見ながら一服しよう。真っ白い総包片(植物用語でソウホウヘン)をビッシリ着けたヤマボウシ。施設の前のワラビには、成長したものに混じって5月と同じサイズが大分にあった。

このコースには夏椿などが多く、陽射しよりむしろ雨が良く似合う散歩道だ。適度に汗も出る楽なコースで、盛んな木々から多量のフィトンチッドが降り注ぐ。

尾根に出ると僅かに気温が下がって涼しい。施設の側に、台高・大峰辺りから移植したのかヒメシャラが数本、木陰の中に白い落花が点々とあった。明神平へ上る滝上の登山道を彩るヒメシャラと同ものであることが、この際何か不思議であった。

苔むした尾根の岩場のヤマツツジは、花を落としたばかりである。他に彩りは、と探す足元に、小さなママコナの消え入る程のピンク色。明暗の他には蒸せるほどの植物の生気が充満している。

夏椿の林を見上げると、葉叢の上に突き出たゲンコツ、それも数は相当に多い。今年の山は実りの多い年になる筈だ。がしかし、蕾ばかりでは仕方が無い。古い道だと思われる、上乙見との道に出会い、目に飛び込むのはやはりヤマボウシである。

無聊を慰めるように集まった、これまた夥しい数のガラの仲間。足で押さえて木の実をついばむ、今年生まれの小さいのもある。時間もちょうどお昼時、山頂まであと一息を残してお昼にしよう。

ガラに混じってウグイスも、先の梢で鳴き出した。なんとも賑やかなお昼である。もうひとつ聴こえてきたのは山頂辺りから聞こえるオカリナの名調子。ここまで揃うと申し訳ないほど。

お昼の終わりに、合わせた訳でもあるまいが、ガラもオカリナも消えてしまった。一人ウグイスの囀りだけが続いている。ザックを背負った目の前に、飛び出てきたのは今年生まれの小鹿。チビ!、と呼んだ途端に杉の林に転げていった。

長老ヶ岳ピークは無人であった。暫時、美山辺りを俯瞰して、返りはポツポツ来るだろうか。帰りの林道歩きは樹木の観察に良いところだ。サルナシ(キーウィの原種)の花もまた夥しい。

小さな夏椿にもゲンコツのようなまあるい蕾。陽射しの少ない岩陰には、濃い紫のヤマアジサイ。ここらでポツポツなら良かったが、土砂降りまでは想定外、傘をさしても、濡れるズボンを如何ともしがたい。


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