大変な人出で賑わう明王院前の路上、知らない人が見たら祭りか何かと間違えそうな位の人がいる。一部は道なりに分かれ、大部分は御殿山コースに向かう。
見上げると必ずしも多くを見ない、振り向くといくつもの集団、賑やかでカラフルな集団だ。賑やかだから悲愴な感じがまるでない。物見遊山の行列である。
先行するソロの男性の背中が見える。孤独な苦行といったイメージが背中一杯に溢れ、何だか酷く対照的に見える。後続のおばさま達は山ガールの出で立ちで自体明るい。それに比べると先行するソロには色がない。
見れば身なりもどうでも良いようなものが多い。おばさま達を見習う必要があるだろうか。身なりで脚が軽くなる効果があるなら一考に値する。既に限界に達した体を丁度良い石に預けて下界を見下ろす。涼しい風が抜けて行く。
元気なおばさま達と一緒のおっちゃん達も元気に登る。お姉さんに連れられたお兄さん達も元気だ。歩き出して気が付いた。お兄さんだけのパーティーは、賑やかだけれども休息が長い。それに伍して登るのである。
抜かれながらもヒョコヒョコ歩く人がいる。右足踵は上げたまま地に落ちない。義足かも知れないが大変な努力だ。持てるものは何でも持ちながら全身で登って行かれる。頭の下がる思いである。
この方の後ろについて尾根上まで、暫く休まれるようなので先を行く。夏道を離れて尾根道へ、涼しい風が抜ける別天地で一本つけよう。昨日の打ち水で多少湿り気も残っている。
人の気配に振り向くと、先の男性が登って来られた。にっこり笑って尾根に消えた。少し間を置いて若いカメラを持った男性が来た。何やらキョロキョロ落ち着かない様子。
後ろに付けると安心したようだ。夏道に出会うあたりをヒョコヒョコ登る男性がいて、後ろをカメラが追い掛ける。そのままの形で御殿山、二人は休むが陽射しがきつい。
先にワサビ峠に降りてさあ木陰、と見た灌木の下は人だらけ、已む無く暑い西南陵を登る。西南陵に大きな木は無い、当然木陰は希少である。希少な木陰は先行者がおられる。ダメージの現れた両足に鞭打って、やっと見つけたルートから離れた風の抜ける木陰、百里ヶ岳辺りが霞んで見える。
近くにホオジロがいるようで、鳴き声がすぐ側で聞こえる。と、数メートル離れた灌木に、所在なさげに止まる2羽のホオジロ。口に餌を持っているところを見ると、すぐ側に雛がいるのだ。人が去るのを待っている。仕方が無いので明け渡そう。
最後のピークを超えると賑やかな武奈ヶ岳山頂。ゆっくり出来るスペースもなし、直ぐに移動する人も多い。ただピストンでは面白くない。西南陵から直ぐ口の深谷源流部に下降、水の少ない谷をワサビ峠下まで,古い杣道跡はまだ残っていた。
降りに入ると流石に賑やかな山ガールのおばさま達も、恐る恐るのへっぴり腰。お互いにムフフと笑うところにまだ余裕。登山道の片隅で、半死の顔の男性二人と対照的であった。 |