石田川ダムに続く道の脇に、平然と佇み車を見送る猿が一匹、直ぐ下のキャンプ場には満員の客がある。上手に振舞えば思わぬご馳走にあり付く事もあっただろうか。
用意が整ったところにタクシーが1台、乗っていたのは妙齢のカップルである。立派な登山靴を履きザックにはストック。うかうかすると歩き方のコーチを受ける恐れもある。
登山口はすぐ目の前で、モミジイチゴを摘みながら見上げる急斜面、身体の為にはも少しイントロが欲しいところだ。厳しい登りは何処やらの心臓破りの坂どころでは無い。少し登るとダムに注ぎ込む水の流れが目に入る。
誘うかのようなカジカガエルの鳴き声が聴こえる。それでも登らなアカンのや〜(T_T)。だいぶん高度を稼いだ辺りで山腹のトラバースである。これが真に有難い。先から聞こえる涼やかな水の音。
ご褒美の唯一の水場が待っているのだ。このところの少雨で流れは細い。細い流れでも顔を洗うと生き還る、有難い。此処で最初の小休止、気温は21℃で暑くは無い筈、そよそよと吹く風は涼しいのだ。
尾根までは厳しい登りに容赦はない。植林が過ぎる辺りにビッシリ花を付けたヤマボウシの林があった。途中のウツギの林も真っ白に見えるくらいの花付きであった。今年はやはり、山は豊作だと思われる。
ここでも小休止、雲間から漏れる陽射しの暑いこと。出来れば木陰を歩きたい。何とか峠出会いからは落葉樹の林になる。真っ直ぐな樹木はまずない。サワフタギは綿毛のような花を沢山纏い、ナナカマドは手鞠のような、やや着色した花輪を載せている。
カッコウの仲間が盛んに鳴く。すぐ目の前の梢で鳴く2羽のジュウイチ。一方は上手に囀りもう一方はジジジーでまるで悲鳴を聞く様。武奈ケ嶽ピーク下まで露払いをして貰った。有難いのかどうだか複雑な心境である。
武奈ケ嶽ピークは気持ちの良い平坦地で、ニョロニョロ幹を伸ばしたブナやナナカマド、地表は苔で覆われ眺望も良い。右手遠方は琵琶湖に続き、左手は三十三間山を隔てて小浜から日本海に浮ぶ小島までの大パノラマである。
ブナの木陰でこれを観て、今日はこれで良いやろう。今日の体調では三重ケ嶽は厳しすぎるのだ。ピークを後に降りに入って後続の方々が反対側から登って来られた。
その数は予想の倍以上、なかにはパンパンに膨れたザックを背負う方もあった。小鳥も驚く山頂での宴会などはあっただろうか。
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