■ 比良・大津ワンゲル道〜釈迦岳・コヤマノ岳
・・・・2013年05月26日
2013.5.26

駐車スペースはどこも満車、今まさに出発を待つばかりの登山者で溢れている。ところがワンゲル道の前には1台もないのだ。なにゆえ誰も停めようとしないのか。

用意が整ったところへ1人の男性が歩いてきて、川を渡って林の中に消えていった。後を追うようにワンゲル道に入り、溝状の登山道を歩く。

見ると、かなりの足跡が残っている。残念ながら登りなのか降りなのかは分からない。朝方か夜中か。ワンゲル道は新しい登山道ではあるが、前身はもっと古いはずだ。

柔らかな葉叢の先には集落が見え隠れし 生活の音も盛んに聞こえてくるくらいの距離にある。岩の欠片を集めた砦のような遺構もある。もしあれを暗闇の中で利用するとしたらどうだろう。

些か妖怪じみた話になってくる。突然、鋭い枯れ枝の割れる音が響く。薄暗い林間から現れたのは、3人の高校生位のハイカーであった。

ザックの上にはマットがある。随分早い帰還である事か。もしや夜っぴての作業で、、何の作業であろう。細尾根に乗る辺りで、痩せた初老の男性が追い越していった。息は荒く、杖に縋る足取りはよろめくようであった。外界の喧騒が漸く届かなくなった辺りである。

気付くと夏鳥の囀りが喧しい。太い声のツツドリ、うるさい位のコマドリなどなど、極めつけはジュウイチである。毎年この辺りに営巣するらしく、イチョウガレの傍の森から響いてくる。僅かにあったシャクナゲははや終わり、ベニドウダンがこれに代わる。

釈迦が近付くと日差しも漏れて明るい。サラサドウダンはやや早い。釈迦のピークからカラ岳にかけてシロヤシオが満開だ。今年は花も多く雨も無かったせいか確りした花が多い。ワンゲル道から見えていた幽霊の様な木は、綿状の花を大量に纏ったアオダモであった。

似た花でも、ウワミズザクラは随分違う。長めのまつ毛ではあるが、小さな5弁の花からなる良く整った形状である。カラ岳方面から、お父さんに引率された小さな女の子2人のハイカーとすれ違う。2人の顔には花どころか苦悶の表情があった。お父さんの歩みは早い。

北比良峠から多くのハイカーが集う八雲が原に降り、池を見ながら木陰で昼食、抜ける風で汗が乾く。このまま降っては申し訳ない。北に聳えるコヤマノタケの直登コース、木陰も出来ず暑かろう。暑かろうがこれを行こう。

武奈ヶ岳は人が多いのだ。登るにつれて、登ってきた釈迦が見え、北比良峠が見え、琵琶湖が見え、湖東平野が見え、最後に、コヤマノタケピークのブナの木に登ると、黒い10メートルを超える怪鳥が見え、こいつは木の側まで飛んできて、近くの尾根の樹木に接触して飛び去った。

パラグライダーの変わったやつである。西の空に、雨でもないのに虹を纏った雲が出ていた。何かの災いで無ければ良いが。木を降りて降るヨキ峠谷、林床は、葉柄を残して落葉したハウチハカエデの緑の絨毯であった。前途にはまだ厳しい青ガレを残している。


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