林道から瀬戸峠を抜け愛知川を渡渉、これすらも多少の犠牲を払っての渡渉であったのだが、右岸の踏み跡はほぼ藪に飲み込まれた後であった。
藪に遮られながら、人も鹿も含めた意味での獣道を辿り、どうにかこうにか白滝谷まで辿り着いた。最後は厳しい道なき斜度をよじ登り登山道に合流した。
道は有難い。道が無ければ僅かな距離にも1時間を費やしてしまう。白滝谷出合でホッとひと休み。今日は既に、国道から瀬戸峠経由で歩き、あとは藪漕ぎでここまで来た。
しかもテン泊装備でやたら疲れる。そんな訳で、抗う余地も無く早々と泊地を決め、重い荷を下ろした。決めたのは良いが、何をするでも無く時間を持て余す。対岸の山桜の散る様を眺めつつ、待つ夕闇は如何だろう。水音が多少煩いのは玉に瑕。
翌日は、多少軽くなったザックを背負い、昨日残したヒロ沢まで歩く。余裕が有るので川面に近い所はいちいち降りて渓相地形をチェック。天狗滝を望む断崖の上からアカヤシオのピンクの花びらが水面に向かってダイブする。そうこうしている間にあった筈の余裕はヒロ沢を過ぎお金峠で13時である。大明神には少し前に挨拶したばかりだから、今日は真っ直ぐ峠までの急峻な斜面を登った。
今日は暑くて風が無い。昨日より5度ほども気温が高く、カサカサの枯葉に埋まる谷底は暑い。お金峠から谷尻谷への下降ルートは、落葉が厚く下には岩がゴロゴロの急斜面である。
谷尻谷の流れのそばは、緩やかな地形の雰囲気の良い場所だった。お魚さんの姿もあって、心象としては、雨乞岳西の奥の畑谷に似ている。北谷尻谷出会まで降ると釣師が2人。やや深い瀞に竿を出して佇んでいる。
ありゃ〜魚さんの機嫌が悪いと釣れないだろう、などと嘗ての非道を忘れ勝ちになる。邪魔をしないように北谷尻谷に沿って遡上、途中、イワウチワの群落が林床を覆う場所があった。ここを抜けると再び明るい緩斜面が広がり、この辺りも嘗ての鉱山に関係した場所であったかどうか。樹木に葉が無い事もあって、どうかすると人のよすがを探してしまう。
ようやく銚子ケ口まで這い登る沢に辿り着き一服。すると北谷尻谷側から降ってくる男性一人。男性といっても既に初老を超えているだろう。ところがこの人、朝明から入山、大瀞を通りお金峠を抜け、ここから銚子ケ口に登り大峠を降って来られたよし。
三重県訛りの強い楽しい人で、来週はお友達と同じコースを回るらしい。話込んで時間を食った。あと4時間を残しているとの事、駐車地に陽があるうちに帰れるかどうか。こちらもそれほど余裕は無い。お別れしてから黙々と登り詰めた銚子ケ口東峯。
記憶ではこんなに展望のある山では無かったのだが、御池、藤原、正面に釈迦岳、右手に移ると御在所、雨乞岳、とまあ〜地図の山がほぼ全て見渡せる。出始めた霞と伴に大地の熱気も冷め始め、良い雰囲気の夕闇まじか、またまたボーと座り込んで、気づくと15時30分を回っている。
林道閉鎖で車は国道の脇、どんなに近道を探しても、正規登山道と変わろうとは思えない。普通の土日なら遅い時間でも無かろうが、今日はゴールデンウィークの中日である。杉の植林地を転げるように、少なくとも気持ちではそうであった、急いで降りて17時を回って帰還。近くのキャンプ場では今まさに乾杯の声が聞こえそうだ・・。あ〜足が痛い
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