天気図から、予想可能な今日の天候のなかには晴れ間の可能性もあり得たのだが、大君ケ畑に着いて直ぐ諦めた。陽射しは無くてもと思っているそばから黄色い染みを窓に残して降り出した。
コースは違えども、昨年から3回、雨とガスと嵐に見舞われている。よほど相性が悪いのか日頃の行いの因果であるか。R306ゲートはひっそりと閉まり、補修工事の脇に先行車1台。1年見ない間に護岸の崩壊が進み、川幅は広く路は更に狭くなった。
房ザクラの花は盛りを過ぎて萎れている。さて歩きはじめて身体が重い。いきなりの傾斜地にしてもどうもおかしい。御池谷と別れて2つに分かれる谷の真ん中に踏み跡が続く。
御池谷を登ってヒル木場に上がってもよかった。急傾斜の山腹と御池谷の白い川底は付かず離れず同じ距離で右下にある。同じ傾斜と見て良い。見上げた右上の稜線にヒル木場辺りが見えて来た頃、大きな音を立てて霧が近付く。
霰である。相当激しく降ったあとで雨に代わった。気力で持ち上げていた重い身体に頭痛が加わった。これは相性の問題では無くて、どうも因果の報いか或いは呪いか。あれこれ思い当たる処を探ってみたが其れらしい心当りがない。心当りが無くても怨みは有るだろうが、天を操りひとの身体を操作するとは、相当の術者である。
雨の斜面に花芽が一輪、お日様が欲しいところだがご機嫌だ。術者もここまでは及ばなかったとみえる。再び杉の林の急登が続き、鞍掛尾根下の疎林の辺りでオーバヒート、テン泊装備の男性が一人、ダブルストックで降りて来る。にわかに冷却効果が現れて、すれ違う時には余裕もあった。が、やはり今日は調子が悪い日。
雨はそれ程も強くは無いが尾根に上がると風が強い。気温は5度で身体は冷える。ガスが流れてきては去っていく。御池谷あたりから湧き上がるガスで、鈴ヶ岳は見えない。先の男性の踏み跡がひとつ、よく踏まれた登山道に残る。
ピックんピックん打つ心臓を騙し、よろけるように辿り着いた鈴北岳、出迎えたのは、帽子も飛ばさんばかりの強烈な風。身体が重くて頭が痛くて、おまけに鼻水ときたらコダック600。もはやこれまで、名残に日本庭園まで下り、直ちに谷を下ってフクジュソウ見学。人参の葉がやや多くなり、花はどれも閉じたまま。
直ぐにとって返して鈴北岳。これ程慌しいツアーもあるまい。最後の足掻きで、ピストンでは詰まらないから鞍掛峠まで歩いた。途中には汚れた残雪もあり、無垢な雪面で傍若無人を働いた。が、仔細に見ると、鹿かカモシカか大きな足跡を遺している。
振り向いたテーブルランドは雲に覆われ北側山腹のところどころに白い斜面が残っていた。トンネルは厳に閉鎖され、三重県側には大掛りな工事の基地らしいものが見えていた。
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