半国山へは全てのコースを歩いた積りで、中でも宮前からは綺麗な尾根道もあったりして、最も優れたコースだと思っている。
しかし今日は久しぶりに変わったコースをやりたくて、本梅町中野に車を停めた。少し行けば宮前だし、少し戻れば井出コースである。
取り付きの尾根は異なるので、山頂近くまでは違うルートを辿るだろう。道らしいものがあるかどうか、行ってみれば分かる事だ。
広い耕地を抜け、山裾に貼り付くように旧道に沿って並んだ家々を抜け、神社の裏手に続く未舗装道を見つけた。
神社のご神体が山だとすれば、必ずや道があるはず。で、踏み込んで驚いた。規模こそ小さいものだが、山裾ギリギリに建てられた新興住宅地があった。まだ空き地もあったが買う者が有るだろうか。
道はすぐ、車道と見るからに古道とに分かれ、古道を進んでしばらく行った伐採地で形骸と成り果てている。
形骸であれ何であれ、道型だけはしっかりしており、見間違う事などはないかのようである。深く抉れた広めの道には、辺りから転がり落ちた石がゴロゴロして、その上に濡れた落ち葉が重なって、歩き辛いことこの上ない。
区間によっては猪の領域であるのか、石と落葉と土を混ぜ返した畑であった。あまりの辛さに道を外して歩こうものなら、藪に苛まれて結局また道型に戻る事になる。
そうした事を繰り返しつつ、高度も大分稼いだ斜面に、凡そ20メートルもある2段の立派な石垣が出てきた。道からは外れた場所で、他には何も無さそうな所だ。
調査の結果、往時を偲ぶ何物も発見出来なかったのだが、興味を引く遺構である。道に戻った辺りで雪が出てきた。高度を上げるに伴い、気温の低下と同時に段々深くなってくる。
ゆっくりした尾根に差し掛かり、道型は無くなり踏み跡は雪の下で、何処を進むべきかちょっと観渡した先に、雪の上の鹿の踏み跡が無数にある。
そのうちの一つのトレースには複数の足跡があり、かつ目的地があるかのように、ほぼ真っ直ぐに続いている。鹿も、固めの石のない確りした処を好み、それは多くの場合人の道で有る事が多い。
迷うことなく鹿のトレースを辿り、思いなしか道のようにも見える松の林の中、気が着くと、広い尾根の外れに続く井出コースを歩いていた。このあたりで積雪は30cmほど、多少負荷の掛かる程度である。
鹿のトレースはなおも続き、大阪側コースの出会いから人の踏み跡も加わった。鉄塔下の伐採地の雪は更に深く、宮前方面から1名の足跡が更に加わる。強い風に雪煙が立ち、寒々しい光景にも見えるのだが実際は零度。額に汗して山頂を目指す。
山頂直下の樹林では陽射しが溢れて温かい。更に踏み跡を加えて山頂プレートの前、雪は少なくて遠望も不可、ガスの晴れ間を待つ間に、北側の肩辺りから聴こえてきたバイクのエンジン音。
けたたましい騒音を避けていざ下山。鉄塔下から来た道をピストンする。大坂ルートを過ぎ雪上に残る足跡一つ、只々これを辿るのみ。帰りに再度見たかった遺構の石垣、何処にあったか出逢う事なく下山した。 |