宮前公民館の裏手から立ち上る白い煙り。新芽が僅かに伸びた田圃に,今日最初の陽射しが煌めき、概ね零度に近い冷え込みの中でも随分温もりを感じられる。
白い煙はおもむろに棚引き、辺りは初冬の匂いで溢れている。火の番人はお爺さん、燃えているのは柿の枝だ。これを境に山影に入り、車の暖房に慣れた身体には凍えるような寒さだ。
川に沿った金輪寺への道は、川面の冷気を運ぶのか頬が痛いほど。途中の2つある池は、下の方が半分だけ凍っている。早い歩みに伴い身体も温まり、頬から汗の雫も落ちる。
時々すれ違う軽トラの広い荷台の片隅、大根だの芋だのが積まれている。道の終点には寺だけである、如何にも師走らしい光景であろう。
先週は薄い雪があった。気温だけなら今週の方が低かろう。山腹から染み出した水と云う水は悉く凍り、泥濘む筈の登山道はコチコチで、薄化粧の雪の上に数台の自転車の轍。
尾根に乗る辺りから山を鳴らす風の唸りが絶え間無く起こって騒々しい。随分長い山鳴りに耳を澄ませば、飛行機の爆音で有ったりもする。登っている間は温かい。透明な林に陽射だって少しはあるのだ。
岩の多い尾根は歩き辛い。落ち葉の下の岩は氷を纏い、足を乗せるとよく滑る。専用の自転車でもこれは相当滑ったに違いない。山頂直下の切り開かれた大地の上は、僅かな陽射しを捉えて温かい。
キノコでも生じはしないか、彼方此方見て回った。得体の知れない黄色いキノコが桜の根株に一箇所だけ。不明なキノコほど恐ろしいものはない。何方か摘んで見たような痕跡があったが、身を持って体得しているものは手は出さないのである。
バリバリ凍った落ち葉を踏み鳴らし、最後の厳しい斜度を済ませた半国山頂。風も少なくやっぱり多少温かい。霞の彼方の見えない山並を眺めるに、地蔵山にも雪は無く、更に北の山々にも、凡そ雪らしい雪は無さそうである。
などとぼんやりする間にも天候は変わり、上空は全面真っ黒な雲。風も強く冷たくなって雪さえも混じってきた。僅かな間に気温は数度下がったらしい。夕方のような暗さである。山頂を辞した尾根の上で、手持ちの温度計は-2度であった。
(´・_・`) さぶっ |