一段と秋めいて見えるのは、ただ色付きはじめた山の端の故では無い。あちこちで進む収穫とそれを見ようと集まる人の群れからも季節が感じられる。
中山谷山の支尾根に入ると、色付いたマンサクの葉が風に舞ってガサゴソ林床に落ちる。林床には根までも完全に枯れて砕けた笹の名残がある。
急斜面のヤブを漕いで辿り着いた嘗ての笹原はまるで、造作を施した公園のようで、良い具合に配置された木の影に座って 遠くの山並みなどを望むには格好の場所になった。
もう少し登った、谷の源頭部に出来たブナなどの樹林に覆われた見上げるような空間も、明るく清々として気持ちが良い。
気持ちは良いが登るとなかなか骨の折れる斜度が続く。これを詰めた先にも笹の後退で出来た庭園があった。庭園はしかし幾らか渇き過ぎていて潤いが無い。
夏以降の降水がたり無かったのかキノコの類いも非常に少なく、数種類を数える程度で色も良くない。すっかり枯れてしまったミズナラの尾根は明るくなった。
明るくはなったが今年の芦生は不作である。赤く熟れた実を沢山つけたウラジロの木に僅かに黄色い実があった。近くの栗の木にはクマ棚があり、残った枝先の栗の実は小さくて少ない。近くのアオハダの木に実は無かった。
冬を前にしたクマは何処で腹を満たす事になるだろう。クマだけで無く鹿の餌になる様な林床の草も無い。有毒の葉を齧った痕跡があって、想えば気の毒な事である。僅かに生じたキノコ等も食べているのだろうか。
中山谷山のピークを右往左往する影がある。ピークはブナの木陰にあって風が抜けてやや寒い。芦生の谷から頭を伸ばす巨大なブナの林を見下しつつ、木漏れ日のある西尾根に移動。後ろから、立派なカメラを持った男性が一人、黄色く色付いたブナの森を写して五波峠方面に降って行った。
八ヶ峰方面に展望の開けた木漏れ日のある広場に、先行者となるジムグリの小さいのが居た。30センチ足らずの子供で、人の足音に驚いて逃げ腰である。よく見ようと近づくと反対に逃げる。回り込むとまた方向を変えくるっと小さな円を描いてとうとう固まってしまった。
イジメる積りは毛頭ないので、その旨釈明をして少し離れてシートを敷いた。理解したかどうだか不明だが、こちらは兎に角気が済むのだ。
わし、やったる…やったる…やったる… 這いずったる------!!!、と、叫んでいたのは大蛇の如く、約20m程も地を這いながらやっと明るい樹間に顔を出したコシアブラの木であった(写真左上)
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