いつものように火打岩入り口の橋の隅に車を止めた。と、欄干に「登山者用駐車場800m」と書いた標識がある。5月のクリンソウの賑わいを対象としたものであることに疑いはない。その他の季節は登山者に開放しようと云うのである。
既に用意も終わったあとであったし、故にここに止めるな、とは書いてなかったので、今日だけはここに止めさせて貰おう。道端のホタル草が満開である。梅雨の合間に夏草は生い茂り、晴れ間を縫っての草刈風景。
お世辞にも若いとは形容し難いのであるが、思っていたよりお若い方もおられるようである。庭の舶来の花は満開である。引き比べ、国産の野草はホタルブクロと薊くらい。件のクリンソウも終わったあとで、ドクダミの白い花なら何処にもあった。
やや暗い集落からの登山口、森の中の湿度も高く、薄日でもさそうものなら何はなくとも汗がでる。尾根までの急坂で大汗をかいた。確りした古道の尾根道には、僅かにそよ風があって涼しさがある。
じめじめして暗いところを除けは快適な道である。ゆっくり歩いている後方からきた元気な若者一人、お先に〜とすたすた登っていく。逞しい若者だ。クリンソウの自生地には流石に花一つなく、白菜に似た葉が生い茂っている。
笹が完全に姿を消した御岳寺跡の登山道、岩と土だけでは何やら潤色に欠ける気がする。再びこぼれ始めた汗のせいか、どうにもそのように思われて仕様がない。あと少し、あと少しと耐えてきた展望の岩場。日差しを遮るコナラの木陰、風の抜ける綺麗な岩場、目の前の梢では鳥も飛ぶ。
飛ぶ鳥が、たとえハシボソガラスであったとしても、不平を云うものではないのである。暫く汗を乾かしてのち、ピークまでの僅かな残りの道を行く。ピークの岩の上は暑かった。直ぐにオオタワに向かって下りの道に逃げる。
逃げる明るい尾根の上で、今まさにビールの蓋を開ける6人程のパーティー。見れば既に食事も終わり、残った缶ビールを浚っておられる。飲むか?、などと声をかけて頂いても、バチもあたるまい。残念無念。
昼になっても続くオオタワからの三岳詣で。木陰で小休止の間に、先ほどのパーティーが下っていく。何れも体格の良い方々であった。オオタワに下ると、小金ガ岳に向かわんとする件のパーティーの後ろ姿。
若やいだ声を惜しみなく撒き散らし、杉の林に消えていった。何て元気な人たちであろう。
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