ダムの水は少ない。5月の降雨が少なかった事で説明は付く筈だが、周辺道路に滲み出す水の多さ、谷を流れる水量は必ずしも同じではない。
積雪のお陰で安定した地下水量があるものと判断しよう。それにしても、若狭武奈ガ岳への斜面は厳しい。厳しい斜面を縫う様に続く登山道。
曇りがちではあっても光もあり、向いの山の新緑と微風にも恵まれて、先週のような苦行のようではない。トラバースした先の急角度に落ちる谷川には、火照った顔を癒す冷たい水が流れ、川岸のタニウツギの花を散らした林床は優しい。
杉の多い子尾根を抜け、稜線に出ると独特の木々がある。背の低い、素直に伸びることの無い木々である。積雪に耐えるように身を削ったのだろうが、僅かに斜面を降ると立派なブナなども見られる。
僅かな差異がもたらした結果だ。人間世界と露ほども変わらない。矮小な木々の間には夏草も多く、合わせると小鳥などには格好の繁殖場所になるらしい。
見かける小鳥の数も多く、中には登山道を歩くだけで威嚇を受ける。小鳥の威嚇であるからこそばいくらいのものであるが、下心も何も無いのであるから些か迷惑でもある。
武奈が岳ピークから下って来られた5人のパーティ、元気なおば様がたであった。ピークで休息の後緩い尾根を歩く。頭のあたりに咲く木本類の花、ヤマボウシはすでに緑色に変わり、サワフタギがそろそろ本番である。
前方やや右手に聳える三重ガ岳、ここから大きく降って登り返す。やむなしと諦めて下る事数十分、エネルギーの補給を感じて小休止、前方下から賑やかな声が聞こえる。
見ると木陰に弁当を広げた二人組、話題は下界の事らしい。登り返す頃に青空が拡がった。とたんに温気に包まれた尾根の暑いこと。所々、運良く風当たりの弱い当りのブナの木陰は涼しかった。
三重ガ岳ピークは無人であった。加えて眺望もまたまるで無い。暫く風に吹かれて小休止、時間も既に残り少ない。下り始めた尾根筋の立派なブナの大木、怒り出したのはアオゲラである。
こいつはたちの悪いところがあって、人を巣に招いておいて、そばから帰れ帰れと怒り出す。巣の中の雛は知ってか知らずかマンママンマと騒ぎだす。遂には夫婦して追い立てまくる。
やっとのこと逃れて、近道がある。林道歩きはやや長かろうが、今日はここから近道を降ろう。その後の林道歩きの長かったことは云うまでもない。
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