今日は珍しく好天に恵まれ、明王院前も川を渡った自然の家の駐車場も一杯で、今しがた到着した路線バスもまた満員である。何時もながら、清冽な流水に沈めたケース入りのビールに対する執着はこれを無視できない。
缶ビール一本位は持ってくればよかった。見上げた急斜面の九十九折れの登山道には、うな垂れたハイカーの姿が延々続く。どうみても亡者の行列に見えるのは仕様がない。前後を挟まれて登ること1時間弱、後続の方のお顔を拝見するとこれも汗まみれ。
汗にまみれて漸く僅かな水平道に到着、見上げた斜面に溜め息を禁じえない。ここからは自然林が続き、晴天の空から降り注ぐ光は、若葉を透かして黄緑色の明かりをもたらす。あちこちから感嘆の声が聞こえる。
注意が上方にあるお陰で、小さくも無い岩が転がってきた。やや距離をおいて登ること更に30分、やっと尾根に辿りつき、思い思いに休息する中を、真っ直ぐ尾根に進んでここでやっと小休止。
樹林の下は木陰があって、抜ける風は乾いてひんやりとしている。些か放心の体で10分ほど。腰ほどは上げはしたものの、既に足はひょろひょろである。ここからは、萌え出る若葉を楽しみながらあるくことにした。
これなら遅くても何とか形になるだろう。再び夏道と出会い、既にバテバテの方々の後塵をはいする形。こちらは樹木や花芽の状態を観察しながらだから、恥ずかしくない。観察結果として、今年のベニドウダンの花は少なめで、開花はあと一週間程あとになるだろう。
一部には、既に開花を迎えた固体もあった。これは、よほど気を付けて観察された方のみが知りえた事実であろう。と、思うことにしたのである。御殿山のピークは暑かった。ワサビ峠から飛び出た若い男性、何に驚いたのか、キョロキョロ辺りを見回す。
いよいよ西南陵、抜ける風が冷たくて、思った程は暑くない。背の低いヤマツツジが今にも咲きそうである。身体は小さいが花はとても大きい。毎年のように、杉の梢で囀るホオジロ。潅木の林では子育てに忙しい筈だ。
コイワカガミの花はそろそろお仕舞い、恐らく愛惜の眼差しで、これを写すご夫婦がいた。武奈ヶ岳ピークは押すな押すな、写真撮影が出来ぬではないか、といった悶着があったかどうだか。それくらいの混みようで、加えて長く尾を引く西南陵、コヤマノタケ方面からも詰め掛ける。
草の上でお茶を少々、お隣は午睡の時間である。去る人も後を絶たず、コヤマノタケのブナでも見に行こか。肩を過ぎると人の気配がめっきり減った。静かになった尾根上からカラ岳方面を見下ろしているところへ、またまた若い男性が現れた。
カラ岳方面を眺めては、不思議そうな顔で見詰める。この場合、何か説明する必要があったのだろうか。大枝を延ばしたブナの下では、4人程のパーティーが昼食中であった。まるでピクニックだ。
中峠から口の深谷に下降、途中、林床一面にハウチワカエデの葉があった。一様に葉柄がなかった。何が落としたのでしょうね?。へとへとになって御殿山に上り返し、いつものように、膝を庇って急斜面を下った。同じように膝を庇う健脚そうな方とほぼ同時の帰還であった。
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