気温はやはり多少低めに推移している。ということは、山歩きにも有利ということだ。激しく流れる谷川に架かる丸太橋を越えると直ぐ、道を塞ぐように倒れ掛かる倒木。朝から腰を折るのは一苦労。踏み跡を見ても、同様に苦痛を感じるハイカーが多そうだ。
その後も時々同じような倒木があったが、最初のものを除けば殆ど困難は無い。暫くは車や電車のノイズに加え、暴走族かモーターボートの爆音が響き渡る。心持ち、夏鳥の囀りが少ないように思う。まだジュウイチの声を聞かないのだ。
林床にひっそりと咲くシライトソウ。期待したサラサドウダンは、硬い小さな緑色した蕾である。右手から出会う道の脇に、既に花を落としたシャクナゲの花。その後も続くシャクナゲの林に、今を盛りの花は無い。換わって尾根を明るくするのはミツバツツジ。
薄暗い、岩陰や樹木の陰に咲くヤマツツジは、杉などの色に紛れて目立たない。高度を稼ぐに伴いイワカガミの小さな花が道脇を彩る。イチョウガレを越えた岩場に群生する、アカモノも未だ蕾であった。
釈迦岳の山腹に差し掛かれば、サラサドウダンの花陰がある予定であったが、開花はやはり何処にも無い。薄い雲間から射す日差しと寒さ、寒さが勝る明るい林床でエネルギー補給。早々に下山するパーティーが傍を抜ける。
ピークからカラ岳に向かう尾根ではシロヤシオの花陰がちらほら。花は少なめでやや早い。根元には、風にそよぐ小さなチゴユリが頭を垂れる。重厚な葉ムラをつけるオオカメノキには、今でも白い5弁の花が健在である。
ガリバー旅行村を望む谷間から、元気なジュウイチの囀りが聞こえ出した。直ぐ近くでオオルリの鳴き声も確認した。どこかでコマドリの囀りも聞こえたような。風のとどかぬ温かい斜面では、渡ってきた夏鳥にも元気がある。
北比良峠はハイカーの溜まり場。近くの公園を散歩するかのような老若男女、道という道から現れては去って行く。シャクナゲの道は未だ未体験、これを歩いて金糞から下ろう。なるほどシャクナゲの多いルートではあるが、どこも僅かに遅いのである。
金糞からの歩き辛い道、下りながらも汗が滴る。
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