■ 鈴鹿・御池岳
・・・・2009年04月12日
2009.4.13

一年ぶりの君が畑集落、今日は寄合い作業があるようで、早朝から沿道に老老男女の姿がある。ちょっと気になる妙齢の女性、皺の多い面々の中では少し早咲きのカキツバタ。40は越えてるやろか。天狗堂登山口の前に佇む男性一人、ご苦労さんですな〜と思ったところが釣竿が覗いておった。曇りがちの空から雲が去り、青空の広がり行く様はまさに神がかりである。

小又谷林道出会いには先着様が一台、ご苦労なさったみたいで後ろの大きなバンパーは大変な凹みよう。とある情報によれば、今日は大きなアホ大会が有るらしい。大方ぶな権現あたりを彷徨っているに違いなく、とすれば食い意地の張った御仁に違いはなかろう。無縁なものは真面目な修行を怠らないのである。

良く晴れてきた空からは容赦のない日差しがとても厳しい。まずは右側に連なる尾根の一角にあるノタノ坂に登らなければならない。昨日のビールを惜しげもなく振りまきつつ、辿りついたノタノ坂。眼下に見下ろす廃村茨川と君が畑を結ぶ主要古道であったらしい。この道は茨川を通り鈴鹿主稜線を越えて遠く菰野に続く道である。幽かに見える崩壊の続く治田峠への谷筋は、大規模な補強工事の跡がまだ新しい。

ノタノ坂からは尾根に沿い土倉岳までの緩い斜面を歩く。大きな鉄塔が聳える谷の上空には、送電線が南北に横切り、奥深い地にありながら、里山の雰囲気があって懐かしさがある。峠の名前は失念したが、そこを超えるとブナなどの林になり、地表には一面イワウチワが茂る岩混じりの尾根に変わる。今年のイワウチワの花は少なくて、所々に二つ三つとかたまって咲く。

淡いピンクに混じり白いものも点々とあった。左手に巨大な御池の断崖が見えると土倉岳のピークである。御池との間に申し訳程度に肩があるだけの変哲もない平地であるが、空中に浮かぶ巨大航空母艦を望むには最適な場所である。左手から聞こえる声の主達はおバカ大会の常連さんに違いない。

御池岳の舷側にへばりつくと、あたり一面ニョキニョキ生えたバイケイソウの群落。今は可愛らしい新鮮さに溢れた姿も、7月も末になると蝿のたかるとても臭い花を咲かせる。大体同じような終末を迎えるものであるのに、この花のように「有終の美」と滅びの悲哀の内に終わらない物に対する評価は常に厳しいのが世の常である。お釈迦様の好きな花は蓮の花、バイケイソウには当分縁が無さそうな。

上りついた御池・奥の平、風にそよぐ笹の林と東側の岡に薄く喬木の姿。笹の平原にところどころ空虚な隙間を作るのは地面に空いた石灰岩の陥没穴・ドリーネ。カレンフェルトの傍に一輪咲いた青い花のキクザキイチゲはやはり愛らしい。誰かいた筈なのに姿がない。よもや狐か狸か物の怪でもあるまい。アホは妖怪の類と同義語かもしれん。

笹原を抜けテーブルランドの東の縁から北に進んで丸山(御池岳ピーク)に移動した。地上には菰野町か藤原町は良く知らんが、整地された区画が綺麗な町並みが広がる。木陰で昼食のおにぎりを頬張ったのだがこれが美味しくない。ゴマ粒がそのまま満遍なく混じった白飯は、白飯そのものよりも味がない。塩味だけのおにぎりが羨ましい。

丸山手前のピークには十数人の人だかりがあり、どうやら名古屋からのオールドボーイ集団であるらしい。この辺りはだだっ広い草原と化しており、誰が何処をぶらぶらしても迷うようなところではない。赤茶けたイワヒメワラビに混じり小さな茎の先に真っ白な花一輪のキクザキイチゲ。アズマイチゲは奥床しく一輪である。

西の断崖でも十数人、あっちへ行く人こっちへ行く人、登山道でも押すな押すなの盛況ぶり。遠く日本庭園辺りにも人だかりがあり、鈴北岳ピークから流入する人は後も絶えず、どれを見ても人類の平均年齢を大きく変更せざるを得ないのである。丸山を後にして暫くはおばちゃまの後塵を拝して最後尾を歩かせてもらい、このあたりかなと思うところで西の断崖へ移動。

ゴロ谷を望む崖の上には赤テープが張ってあって、落ちたら只では済みそうにも見えない絶壁を下るのである。岩を一つ落としてしまった。「落石〜〜」と叫んで知らせる人はいないのだが、何時までも鳴り止まない岩の音に、内心ぞーとするのである。それでも停まらないのがおバカさん。潅木と岩角にしがみ付いてようやく100m、崩れる岩の溜まり場を更に100m、苔むした岩の上をそろそろ歩いて100m、やっと辿りついたゴロ谷の水場。

頭から被った冷たい水が心地良いの〜。ゴロ谷を御池橋まで移動、一輪しか咲かないニリンソウなどを鑑賞しつつ、後顧の憂いに沈むのであった。御池橋からは長い長い林道が待っている。車と連絡を取りたくても今の科学では無理であろう。科学の進歩は日進月歩、もう少しの辛抱だ。なぞと考えつつ、長い林道を駐車地まで歩くのである。苦労の絶えない件の車は主人の帰りをじっと待ち、如何に機械の身といえども袖の濡れる事も多かろう。帰りの林道にも水溜りはあったな。






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