■ 大峰・川合〜日裏山
・・・・2011年12月04日
2011.12.4

先週は、2週連続で芦生を訪ね、今週は、曇天の大峰を訪ねる。何れも今年は最後になるだろう山域で、凍り付いても雪が降っても春までは行かない。名残の風が吹く川合の役場の駐車場、登山者の姿は何処にもない。

歩き始めた登山道にも痕跡はなく、杉林の切れた先の、葉を綺麗に落とした森は妙に軽薄に見える。稲村ガ岳辺りは時折日差しも漏れ、南に連なる山岳も時に明るい。変わらぬ綺麗な赤松の巨樹を見て、敷き詰められた明るい松葉の道を行く。

林道に飛び出した頃から辺りに日差しが無くなった。風に震えるススキの原から飛び出したホオジロが、近くの杉の梢で鳴いている。尾根に続くルートは高低差も少なく、必要のないピークは殆ど巻いている。栃尾辻辺りの裸の枝には霧氷が光る。霧氷が見え初める頃からガスが濃くなった。頂仙岳どころか、直ぐ目の前の尾根でさえ、全く見えない。

鬱蒼と葉を茂らせたブナの森は、夏場の面影は無くなり、力なく裸の枝を震わせている。熊渡り出合いにも今日の足跡はない。今日の山は全くの無人かもしれず、冬眠に入れなかったツキノワグマが、薄暗い林床をうろついているかも知れない。

頂仙岳手前から林床に薄雪が残り、枝先に付着した霧氷で、枝を垂らした常緑樹が多くなった。大峰回廊からも何時もの眺望はなく、全てはガスの中にあった。

と見上げた先に、5人のハイカーが下ってきた。この時間であるから、昨日の泊まりに違いなく、とすれば、昨日の強風を突いての山歩きである。しんがりはお若い人であった。なんだか少しだけ元気が出たような。

シラビソの林が現れると日裏山である。耳を澄ましても、鳥の囀りどころか山鳴りばかりが木魂する。一際寒さが堪えてくる。日裏山ピークでパンを齧る間に体が冷える。カッパを着て、身体ほどは防寒が出来た。薄い手袋では手が痛くてしかたがない。防寒手袋忘れるべからず。

今日はここまでで良かろう。来た道を忠実に辿り、幾らか見通しの良くなった頂仙岳の巻き道。溢れる光芒の先に春を見た。明るく暖かな色彩の遠景の手前にあるのは、満開のしだれ桜。一瞬間そのような光景が目の前に現れた。

途端に光は去り、春はどこかに霧散してしまった。桜の花は、落葉した広葉樹に綺麗に出来た霧氷であった。回廊を過ぎた北に開けた辺りから、ピーク周辺を真っ白に染める稲村ガ岳、行者還岳が見え始め、青空も覗くようになった。

僅かな日溜りでは、適度な暖かささえ萌してきた。遠望も回復し、遠く葛城辺りも見え出した。川迫川の下流域では、崩壊地の復旧工事が進んでいる。15時を回ると、再び寒さが襲い、辺りの山並みも雲に隠れて見えなくなった。


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