■ 大峰・川合〜カナビキ尾根〜熊渡り
・・・・2011年11月13日
2011.11.13

川合からの弥山は随分久しい。山を歩くようになったばかりの頃に2回使ったきり、その後はトンネル西口・東口と熊渡のルートばかりであった。それというのも登り始めの杉林の記憶が、ただ苦しいばかりで面白くなかったからである。

この夏の、大雨に祟られた時の川迫川・弥山川の凄まじい濁流の記憶と、その後の台風12号・15号の破壊の跡を確認できていないことから、やむなく今日は川合から登るのである。やや遅い役場の駐車場では、二人のハイカーが用意を整え出発したばかり。

裏山に向かわないところを見ると、渓谷の紅葉狩りにでも行かれるのであろう。暗い、じめじめした裏山には他に何方の影もない。皇太子の弥山登山で出来たという階段も、今ではあるべき様子に変わってしまった。先週の山登りに比べると、斜度も随分緩やかである。

のみならず、暫く登ると見上げた尾根筋が明るい。なんと、たかだか30分に満たない時間で、川迫川を見下ろす鉄塔に到着した。何のことはない、記憶とは大いに違い、実際はたいした斜度も距離もなかったのである。ここからは尾根の緩やかな登りが続く。

大きくて綺麗な赤松が点在する尾根の道では、落ち葉の上の橙色の杉の葉とクロモジの黄色い葉が光芒を放ち道を照らす。南の空には真っ黒な雲が広がり、どこかに時折降り注ぐ日差しが恋しい。林が切れると林道に飛び出た。確か通行止めの筈であった道だから、当然車は一台もない。ススキの原を抜ける風が冷たい。

気温は11度、再び尾根に続く登山道を辿り、下り過ぎる不都合な巻き道を抜け、北側の杉の巻き道を辿ると小屋が見える。栃尾辻の小屋は10年ほど前と殆ど変わらぬ風情であった。小屋の中はお世辞にも綺麗とは云えない。

小屋横で、風を避けながら行動食。栃尾辻を過ぎると俄かに大峰らしい雰囲気が漂う。右からの巻き道を辿ると頂仙岳の鋭鋒が姿を見せ、この角度からは初めて目にする。カナビキ谷の出会いを越えた辺りの尾根の隆起も初めて確認した。

巻き道を過ぎると直ぐゆったりしたカナビキ谷出会いである。林立する巨大な樹木に葉は一枚もない。地を這うミヤマシキミの実は赤く、風の中に一抹の寂しさがある。出会いのブナの倒木に腰掛けて暫く休息、早い夕暮れを思うと今日はここまで。林道の様子を探りに、カナビキ尾根を下ろう。

急斜面を下り終えたあたりにある休息の木陰を宿した大きなブナが折れている。折れて谷川に吹き飛んだブナの幹の姿が、「犬神家の一族」で湖に突き刺さった四肢を連想させた。些か不気味である。更に下った細尾根では、向いの尾根の巨大な崩落箇所が見えていた。

林道終点にある弥山川・双門コースに何の警告もないところを見ると、長大な梯子に被害は無い様である。林道には大きく崩れた箇所が2箇所、何れも通行できる程度に手が入っていて、歩き辛さを除けばまず問題ない。R309の駐車地には数台車があって、近くに太公望の姿がないことから、恐らくはハイカーのものだと思われた。

R309の崩壊地は既に補修が済み、御手洗渓谷に近づくに伴い、行楽の人も車も増えてきた。道端では、カキ・イモ・乾しシイタケなど、籠一杯1000円で売られていた。


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