7月31日は何の日か知らないのだが、越畑の休耕田に咲き誇る、金色の女郎花の波越しに、バスから降りたおよそ20人ばかりのハイカーの姿。午後には雨の天気予報、晴天にはない霹靂もある。
葉むらをなでるそよ風もなく、それでも割合に涼しい芦見峠。汗を拭く間にも集合した先ほどのハイカー。どうやら、地蔵山と三頭山と、芦見林道組に分かれるようだ。黒い最新タイツとパンツ姿で目の前を行くおば様たち、若やいだ声にも力がある。
隣の尾根辺りで啼きだした、気の抜けるようなアオバトのさえずり。皆様とお別れして芦見林道、竜ヶ岳の頂点が見える頃には地蔵山の稜線辺りに青空が見える。林道を過ぎ登山道を歩き、竜ヶ岳登山口出会いで竜ヶ岳へ。
たちまち賑やかな声が響き、ぞろぞろと降りてくるおじ様・おば様。木霊する声を頼りに行く先を窺がうと、いずれも芦見谷を遡上している。愛宕山から出て愛宕山に戻るようである。
小バエの多い厳しい尾根を終えたピークでは、今旅立つばかりの単独男性、着いたばかりか、蚊取り線香を炊きだす男性のお二人だけ。日差しの戻り始めたピークは暑い、京都市街を見下ろす石の椅子は耐え難い。
ピークを下った林の中で、休息を兼ねたおやつ時間。冷たいお菓子はうまかった。沢山の青虫の棲むイワヒメワラビの生息地を後に、幾つか越えた小さな尾根、結構長いのでなかなかに応える。
愛宕林道からは、食べ物とビールを目当てに愛宕神社。愛宕山ピークから下りて来る、さざめくような女性の声。人の多さでは群を抜く愛宕神社界隈、どうも今日は様子が違う。
ひっきりなしに往来のある林道で、かけられた言葉が「よう〜おまいり」。境内に近くなり溢れた参拝者、参拝か登山か区別がつかん。電力のない街からの避暑にしても多すぎる。
神社に続く階段したから、およそ空き地と呼べるところに溢れる人の波。冷えた飲み物を売るおばさん二人、水の中にはビールはなし。あたりをウロウロ物色してまわり、自販機にもどこにもビールはなく、加えて如何なる食物も入手不能。
皆さんの手元には、おいしそうなおにぎりやお弁当。一体日本はどうしたことだろう。こんな山の中の神社での、昼下がりのビール位は許される程度のことではないか。ビールが許されるのならあてもまた許される道理。
日本は、このくらいの事を許す寛大さも失ったのであろうか。ハイカーは、声を大にして訴えねばならない。たかだか昼寝に等しい楽しみであり、大汗をかいたご褒美なのである。
などと寂しく境内を後にするなか、続々と詰掛ける人々。何で?、と聞けば、7月31日は千日詣と称し、今日お参りすると千日ご利益が得られるという、嘘か真か有難いお話、また東南アジアの方々にお叱りを受けそうなお日柄であったそうな。
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