僅かに北の空だけに青空がある大又林道、駐車地には溢れんばかりの車がある。中央部は工事中で、些か狭くなっているものの、この天候での人出としては、驚きである。
このルートの最大の難関、急勾配の林道は、僅かな日差しの中でも極めて暑い。木陰を辿りながら歩くのだが、太陽の活動に代わり映えがないとしたら、やっぱり温暖化は着実に進んでいるのだ。
同じ理由で、いつ寒冷化に転じるものかもまたわからん。分からんがとにかく暑い。林道終点からは涼しい谷川に沿った登山道を登る。水の流れを見ながらの登攀は疲れを感じない。沢やさんのように沢を登れたら最高だろうが、そんなオシャレなことは出来そうにない。
登山道は黒く濡れていて、早朝には降雨があったようである。谷川の流れも幾分多い目であろうか。多目の水量で、明神滝は見栄えがするはず。見えてきた滝の飛沫が日差しに煌いて涼しそう。
ヒメシャラの花を散りばめた山腹を、大きく蛇行しながら高度を稼ぐ。雲の切れ間から葛城山あたりが見え出した。一際大きな白い花はナツツバキである。別名は沙羅双樹。ヒメシャラの裸の樹皮は、ひんやりとして気持ちが良い。
湧き水の流れる水場では、体内の水を入れ替えるつもりで沢山飲んだ。傍には赤い花をつけたヤマボウシ。明神平の東屋には、ザックを下ろした5人のハイカー、明神岳に向かう単独のハイカー。
雲に覆われた柴の上で、冷たいおやつに舌鼓。抜ける風も涼しく、と思うまもなく日差しが戻る。どうも今日は天照と気が合わぬ。5人のハイカーは前山めざして歩き出した。明神岳を目指して腰をあげる。
尾根に近づくに従って、綺麗なブナの林の中に、貧弱な葉をつけた固体が多くなった。5月始めの寒気で、新芽を痛めたブナである。来年に向けた滋養を蓄えることができるだろうか。尾根からは緩やかな勾配を登って明神岳。
先ほどの単独男性が弁当を広げている。ピークを少し下った岩場、ハエは多いが風もある、弁当の間に見るパノラマも見事。大峰の山々、南に伸びる台高の山々。少し冷えてきたので移動しようか。東の空から真っ黒な雲が広がりだした。
急いで下る明神岳、追いかけてきたのは雨粒と雷鳴。轟きだしたは水無山。思うまもなく薊岳の辺り。明神平を下りかけ、稲妻がはしったのは谷の上空か谷の中か。直ぐ後に恐ろしい雷鳴が響き渡る。
やれおそろしや、急いで下ろう。前後に2人のハイカーが続き、するうちに大粒の雨が降り出した。雨ほどはどうでもよろしい、問題は雷鳴である。前のお二人が雨対策を始めた横をすり抜け、ひたすら下る登山道、20分ばかりで林道まで降りてしまった。
林道に下りたその後から、更に早い男性ハイカー、林道に下り、真っ赤な傘を差しながら、後ろもみずに消えていった。駐車地に戻ると、同じく戻る僅かな日差し。今日はどうやら天照には嫌われたらしい。
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